中国武漢市を発生源とする新型コロナウイルスの感染が世界に拡大し日本でも既に感染者が確認されている。中国の旅行会社を統括する「中国旅行社協会」は海外団体ツアーの一時禁止を決定しており、訪日客の3分の1を構成する中国人客の減少は日本の観光業に大きく影響を与えるだろう。
また、中国国内では工場の休業や交通網・物流の規制等、経済活動に大きな支障が出ている。武漢を含める中国には日本企業が多く進出しており日本の製造業、日本国内経済への影響も懸念される。
東京商工リサーチが「日系企業の武漢・中国全土への進出状況」調査の結果を先月末公表している。これによれば、日本から武漢には39社が進出し、拠点は45カ所を展開している。業種は輸送機器製造が最も多く耐久財卸や運輸・倉庫業など多岐にわたる。
武漢の日系企業45拠点を産業別に見ると製造業が全体の約半数48.8%にあたる22拠点が最多となっており、自動車や同部品、大手電機などの有力メーカーが武漢に製造拠点を構えている。次いで、卸売業が9拠点で20.0%、サービス業が6拠点で13.3%と続いている。さらに細分化した業種別でみると、武漢の拠点の中で最多は「輸送用機械器具製造業」の12拠点で構成比は26.6%となる。
中国全土では1891社の日系企業が進出し4380拠点を展開しており、産業別ではやはり製造業の2187拠点が全体の49.9%と半数を占め最多となっている。その他、耐久消費財の卸売業の716拠点、構成比16.3%が最多で、自動車や電機の大手メーカーが中国市場を重要視していることがうかがえる。次いで情報処理サービスや広告代理業などの事業関連サービス業が456拠点、同10.4%、電気機械器具製造業の415拠点、同9.4%の順となっている。
武漢では輸送用機械関連の拠点が集中しており、このまま新型コロナウイルスの影響で交通網規制や事業所の休業など、中国経済が停滞した場合、自動車など日本産業をリードする日系企業にも影響を及ぼしかねず、日本への逆輸入も含めて日本の内国経済に大きく悪影響を及ぼす可能性も決して小さくない。
また、春節で中国に帰った中国人労働者が出国規制で日本に戻れず人手不足により国内経済の稼働率低下ということも予想される。中国社会の早期の正常化が望まれる。(編集担当:久保田雄城)