経営破綻からわずか3年でV字回復したオカザキホーム(旧岡崎住宅)の復活劇はどのようなものだったのだろうか。
リーマンショックで世界的な金融危機を迎えた2008年、愛知県岡崎市を拠点とする木造注文住宅販売がメインの岡崎住宅は、民事再生法を申請することとなった。原因は無理な経営拡大による経費上昇や、分譲用地取得による借入負担が経営を圧迫したためだ。その後も続く新興デベロッパーの経営破綻も、無理な拡大路線が引き金になったケースが多く、同社も含め、社会問題としてクローズアップされた。
この岡崎住宅に救いの手を差し伸べ、経営再建に乗り出したのが、中堅住宅メーカーのアキュラホームだ。
経営陣は退き、親会社であるアキュラホーム出身者を新たに迎え、社名も新たに生まれ変わった「オカザキホーム」は再建へ向けスタートした。当時、改革を推し進めた新美会長(当時社長)は驚きの手腕を振るう。まず、各営業所など現場を回り、残った社員の潜在能力を感じた同氏は、一人もリストラすることなく、同じスタッフで再建に取り組むことを決めた。長い間のワンマン経営で、自分の意見を言わないという体質が蔓延していた同社のスタッフは、明確で嘘のない新しい経営方針を理解し、徐々に意見を出し合える集団へと変貌を遂げた。そして、そのスタッフ達の考えが集約され、現在の”誠実”という経営理念が導き出された。
さらに、営業力強化のため、現社長の仲野氏が現場の責任者としてアキュラホームより就任、同氏はまず、営業の基本に立ち返り、会社説明に30分かけるということを徹底させた。これによって、経営破綻した岡崎住宅というイメージは払拭され「オカザキホーム」として存分に営業活動をすることができるようになった。加えて、現在も継続して力を入れている社員研修を積極的に導入し、複雑化する自社商品の理解度アップや営業現場での人間力に磨きをかけた。
一方、売上に関しては売上高よりも利益率を重視する経営へとシフトしていった。その中で「オカザキホーム」の特長を活かす販売戦略を取っている。それは同社の強みである土地知識とアキュラホームの商品力が融合することで、より大きな力が発揮できるということなのだが、その一例として、トヨタ本社近くにモデルハウスを建設し、トヨタ社員の住宅成約に多く結びつけたというのがある。
再建のために取り組んできた対策の結果、現場のスタッフはモチベーションを下げず業務に集中し、全員が業績を上げるという目標に向かって同じ方向を向くことができた。そして、2年間は通期で赤字だったが、3年目の2010年、黒字転換をはかることに成功した。利益も1億2500万円と破綻する前の3倍程に回復した。現在、新美氏は会長となり、社長には仲野氏を据え、債務超過を2年間で解消することを目標に掲げている。
”現場力”を活かし、再生したオカザキホーム。その成功例は同様な状況で苦しむ経営者へのメッセージとなるはずだ。