緊急事態宣言までに東京五輪中止や延期の勇気も必要か

2020年03月15日 10:52

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日本政府は13日、最悪の事態に備え、総理が「緊急事態宣言」をすれば私権制限も行える「特措法」を成立させ、14日施行した。

 WHO(世界保健機関)のテドロス事務局長は新型コロナウイルス感染症が「パンデミック(世界的流行)と言える」とした。そして日本政府も13日、最悪の事態に備え、総理が「緊急事態宣言」をすれば私権制限も行える「特措法」を成立させ、14日施行した。

緊急事態宣言で対象地域とされた都道府県の知事は住民らに「外出自粛」や「施設使用の制限指示」をする権限のほか、医療施設設置に必用なら所有者の同意なく土地や建物といった不動産を使用することが可能になる。

この宣言を行うには「国民の生命、健康に著しく重大な被害を与える恐れがあり、全国的かつ急速な蔓延により国民生活や経済に甚大な影響を及ぼす場合」に限られる。影響の大きさから私権制限は「必要最小限」にすることになっている。

ただ、こうした前提条件での宣言だけに、万一「緊急事態宣言」を安倍晋三総理が行う状況が近づいた際には緊急事態宣言より前に、迷わず「東京オリンピック・パラリンピックの中止」ないし、米国トランプ大統領が言うように「開催を1年延長する」決断こそ、先行決断することが求められよう。

国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は12日、ドイツ公共放送のインタビューに答え「新型コロナウイルス感染症の感染拡大で懸念されている東京オリンピック・パラリンピックの開催について、世界保健機関の助言に従う」と語ったとマスコミ各社が報じている。

にもかかわらず、日本政府は13日になっても「東京オリンピック・パラリンピックの予定通りの開催に向け、IOCや組織委員会、東京都の間で緊密に連携をとりながら(開催)準備を着実に進めていく考えに変わりない」(菅義偉官房長官)と強弁し、都の小池百合子知事も中止や延期は一切考えていない旨を強調した。「WHOの助言に従う」となぜ、言えないのか、不思議でならない。

「緊急事態宣言」の準備までしなければならないのであれば、オリンピックの中止や延期のケースについても検討するのが当然だ。そういったムードは微塵も見せたくないのだろうが、緊急事態宣言を用意するのと同程度に、世界中からトップアスリートを迎えるスポーツの祭典開催国として、責任をもって、あらゆるケースを検討するのは当然のことだ。

日本が開会直前まで選手や観戦者の安全を担保するために「中止」を含め検討していることを内外に発信することは、各国選手団への安心メッセージにもなるだろう。「何としても開きたい」という思いが、感染を広げるリスクを無視し優先されるようなことは1%でも決してあってはならない。『やめる』勇気も公益性から重要だ。(編集担当:森高龍二)