佐川元理財局長と国を相手に真実求め遺族が提訴

2020年03月19日 06:14

 「森友事案はすべて本省(佐川)の指示」。安倍昭恵総理夫人が一時、名誉校長に就任していた小学校建設のため大阪府豊中市の国有地が8億円あまり値引きされ森友学園(大阪市)に売却された問題に関連し、上司の命令で財務省の決裁文書の改ざんを余儀なくされ、自責の念から手記を残して自殺した赤木俊夫氏(当時近畿財務局職員)の妻が18日、「なぜ、自殺に追い込まれなければならなかったのか、改ざんしなければならなかったのか、原因と経過を明らかにし、職員が二度と自殺するようなことのないように」と、当時、理財局長だった佐川宣寿元国税庁長官と国を相手に18日、総額1億1000万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。

国有地売買をめぐっては、昭恵総理夫人の名があることなどから公文書の改ざんや隠蔽、国有地売買に関する資料処分が行われていたことが明らかになっている。赤木氏が遺した「手記」「遺書」が週刊文春3月26日号に全文紹介されている。

 この中で、赤木氏は「森友事案はすべて本省の指示、本省が処理方針を決め、国会対応、検査院対応、すべて本省の指示」と記し「嘘に嘘を重ねるという、通常ではあり得ない対応を本省(佐川)は引き起こした」と明記している。

 そのうえで「刑事罰、懲戒処分を受けるべき者」は「佐川理財局長、当時の理財局次長、中村総務課長、企画課長、田村国有財産審理室長ほか幹部、担当窓口の杉田補佐」とし、手記冒頭に「本件事案に関する真実を書き記しておく必要があると考え、作成した」とした。
 
 公務員としての正義感と上司命令に逆らえず改ざんに手を染めた自責の念にさいなまれ、責任を取る形で自殺する前に「事実を残す」と重みが見て取れる。赤木氏は「ぼくの契約相手は国民です」が口癖だったといわれる。公務員としての自覚と誇りが強かったのだろう。

 一方、佐川氏が文書改ざんや会計検査院への提示資料を最小限にし、法律相談関係検討資料は「ない」と説明するよう指示し、自らは国会で虚偽答弁する背景には何があったのか、背後に誰がいて、そうさせたのか。森友問題の核心に近づけるのかどうか、今回の裁判の行方が注目される。(編集担当:森高龍二)