日本では緊急事態宣言が解除されたものの、未だ世界的には収束が見えていない新型コロナウイルスの感染拡大。各産業分野で大きな影響が出ており、とくに海外市場への輸出割合が大きい事業の被害は甚大だ。
一方、日本の基幹産業の一つである自動車産業は、直近のビジネスへの影響はあるものの、悲観的なことばかりではないという見方もできる。ウイルスの感染を避けるため、公共の交通機関の利用を控えて、マイカー移動に切り替える動きが世界的に増えてくる可能性が高いからだ。もちろん、個人消費が大きく冷え込めば、新車の販売台数は落ち込むだろう。しかし、その反面、付加価値の高い電気自動車(xEV)や自動運転機能搭載車などへの欲求が高まるのではないだろうか。そうなれば、日本の自動車メーカーや自動車部品メーカーなどにとっては大きなチャンスになり得る。
そんな中、日本の自動車産業にとって明るいニュースが発表された。世界的な自動車部品メーカーである、コンチネンタルのグループで、パワートレイン事業を担う、Vitesco Technologies (以下、Vitesco)社が、日本の電子部品メーカーで、SiCパワーデバイスのリーディングカンパニーであるローム株式会社(以下、ローム)と、電気自動車向けパワーエレクトロニクスにおけるSiCテクノロジーの開発パートナーシップを結んだのだ。
SiCパワーデバイスは、炭化ケイ素(SiC)基板から作られるパワー半導体で、現在、主流となっているシリコン(Si)製に比べて、電力損失が非常に少なく、機器の高効率、小型化に大きく貢献する。電気自動車に採用すれば、航続距離の伸長や、バッテリーサイズの削減に繋がることから、急速に市場が拡大しているのだ。
Vitescoでは、SiCソリューションの需要が大幅に増加すると予想される2025年に、最初のSiC搭載インバータの生産を開始する予定を発表しており、すでに800Vタイプのインバーターにおいて、SiCパワーデバイスを用いたシステム開発とテストを行っているが、SiCパワーデバイスに強いロームとパートナーシップを組むことによって、量産化に最適かつ、インバータの最大効率を実現するシステムの構築を加速する狙いがあるようだ。ロームにとっても、このパートナーシップによって同社のデバイス技術と駆動IC等を組み合わせたパワーソリューションが最大限に活かされることで、電気自動車向けシステムにおいてより大きなアドバンテージを得ることになるだろう。
また、両社は今後、800Vバッテリーのみならず、400Vバッテリー向けの SiC搭載インバーターソリューションについても協力体制を展開していくことを表明しており、SiCパワーデバイス市場で二社の存在感が益々大きくなりそうだ。(編集担当:今井慎太郎)