省エネ意識の高まりにより、産業機器をはじめ、家電や自動車など、あらゆる分野のアプリケーションで電子化が進んでいる。
しかし、電子化や高性能化が進むことによって、新たな問題も発生している。それは搭載される電子部品点数の多さだ。中でも自動車分野においては、電動化や自動運転技術の進歩に伴う技術革新により、必要なセンサーやIC、コンデンサなどの数が年々増加傾向にあり、限られた車載スペースにどれだけ多くの部品を詰め込めるかが課題となっている。
構成部品点数が約3万点に及ぶともいわれる自動車の中でも、電気を蓄えたり、放出したり、電子回路の安定化やノイズの除去などを担うコンデンサ(とくに積層セラミックコンデンサ)は、非常に多く使用されている電子部品の一つだ。電気自動車(EV)では、このコンデンサだけでも実に1万個近くが使用されているという。一つ一つは微小な電子部品だが、それでも1万個にもなれば、車載スペースを占める割合は相当なものとなる。しかも、先進運転支援システム(ADAS)などの普及、高性能化、高機能化が加速する中、それに伴ってコンデンサの数も増え続けているのが現状だ。
限られた車載スペースを確保するため、そして回路設計に係わる負荷を少しでも軽減するためにも、使用するコンデンサは1 つでも減らしたい。そんな要望が高まる中、電子部品メーカーのロームが、コンデンサ容量を大幅に低減できる電源技術「Nano Cap」を確立したことで話題になっている。
同社はこれまで、ナノ秒(ns)オーダーのスイッチングオン時間を実現した超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control」や、ナノアンペア(nA)オーダーの無負荷時消費電流を実現した超低消費電流技術「Nano Energy」など、Nanoをキーワードにした電源技術を確立してきた。これらの技術は電源 ICを中心にさまざまな製品に搭載されており、自動車をはじめ、産業用ロボットや基地局のサブ電源など、幅広く活用され、アプリケーションの課題解決に貢献している。
今回、第3のNano電源技術として新しく確立された「Nano Cap」は、リニアレギュレータ等の電源からの出力に対して出力コンデンサ容量を従来技術の 1/10 以下にしても、安定制御が可能になるというものだ。
例えばリニアレギュレータとマイコンで構成される一般的な回路の場合、従来なら出力側と入力側の両方にコンデンサが必要だったが、リニアレギュレータに「Nano Cap」を搭載することで、入力側のコンデンサだけで動作を安定させることが可能になるという。
もちろん、この技術は自動車分野に限らず幅広い分野に対応しており、あらゆる分野の電源回路のコンデンサ削減や容量低減を実現するもので、回路設計負荷の軽減に貢献する。また、同社ではリニアレギュレータだけでなく、オペアンプや LED ドライバなど他のアナログ IC でも「Nano Cap」を搭載した製品の開発を進めているという。
一般消費者の目に触れる機会はほとんど無いが、日本の電子部品メーカーの持つアナログ技術は世界に誇れるものだ。電子化の進む社会の中で、微細な部品に込められた確かな技術が、大きな存在感を示してくれることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)