陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替案が24日、防衛省から与党に示された。岸信夫防衛大臣は「イージス・アショアのレーダーと発射装置を移動式洋上プラットフォームに搭載する方向で具体化を進める」方針を示した。
具体的には(1)護衛艦の使用(2)民間商船の活用(3)洋上への構造物創設による設置の3案から、適切なものを選択していきたい考えだ。
イージス・アショアを巡っては秋田県と山口県への配備計画がハード面やコスト面で頓挫した。その途端に自民党は政府に「相手領域内でも弾道ミサイル等を阻止する能力の保有を含め、抑止力を向上させる新たな取組みが必要」などと『敵基地攻撃能力』を保有する検討を行うよう提言を出した。
持病治療のため辞意表明していた安倍晋三総理(当時)は辞職直前の9月11日に、自民党提案を待っていたかのように「迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことが出来るのか」などと提起し「そういった問題意識の下、抑止力を強化するため、ミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針を検討してきた。与党ともしっかり協議させていただきながら、今年末までに示し、安全保障環境に対応していく」と閣議決定も経ない総理談話を発表し、敵基地攻撃能力保有を後押しした。
安倍総理はこの談話でミサイル阻止に関する安全保障政策の新たな方針に関して(1)憲法の範囲内(2)国際法遵守(3)専守防衛の考え方にいささかの変更もない(4)日米の基本的役割分担=盾と矛の役割=を変えることもない(5)日米が助け合えることのできる同盟の絆を強化することで抑止力を高める、と明示した。
しかし、そうであれば敵基地攻撃能力は検討の余地のないものだ。「攻撃される前に相手領域内にあるミサイルの発射基地を攻撃し、破壊することは事実上の先制攻撃となり、国際法上も違反行為にあたる」。まして、国是としている『専守防衛』の域を逸脱する方針を強引に検討するというのであれば「今年末までに」などと期限切りはあってはならない。国会でも熟議が必要だ。
そもそも燃料面でも液体から固形になり、発射に要する時間が極端に短縮された中で、日本に向けての攻撃と判断する的確な情報把握ができるのか懐疑的。攻撃ミサイルが日本に向けたものでなかった場合、日本は明らかに先制攻撃をしたことになり、戦争を引き起こすことになる。もちろん国際法にも違反する。
こうしたリスクを考えると、防衛省がイージス・アショアにかわる案を「専守防衛」の域内で示したことは高く評価されよう。洋上対応案には海上自衛隊などへの新たな負担や施設警備を含め、新たな課題も多そうだが、国民が納得、安心できるところに収めていただけるだろうと期待する。(編集担当:森高龍二)