日本酒の変わり種はまだまだ少ない

2011年12月05日 11:00

 地方の特産品を使用した変わり種の酒類というと、リキュールや焼酎は数多く見られるが、清酒(日本酒)となると、その製造の難しさなども手伝い、なかなか出会うことができない。

 昨今のご当地ブームもあって、フルーティなリキュール類はみかん、びわ、マンゴー、あんずなど、その数や種類も多く、お土産品として目に触れる機会も多い。また、焼酎も一般的によく知られる芋・麦・蕎麦とは違い、黒糖や牛乳、栗・昆布など、変わり種のものも多い。

 大手メーカーでも焼酎やリキュール類に関しては扱っている。例えばキリンホールディングスではキリンビールからゴマ焼酎が出ており、アサヒビールはシークァーサーをはじめとするフルーティなリキュール、そしてサッポロビールにはわさび焼酎といった珍しい商品もある。また、サントリーはジャスミン焼酎という変わり種の焼酎のほか、4年前にブームとなったトマト酒の火付け役となったリキュール「トマトマ」などを販売する。

 一方、醸造酒の代表格、日本酒は原則として米を使用していなければならないので、その原料である水・米・米麹と発酵させるための酵母の種類によって味や色味も変わってくる。そこに他の原料を加えて清酒を作るには、特別な技法や申請など複雑な課程を経なければならないので、見かける機会は少ない。

 だが、そんな中でも変わり種の日本酒は存在する。例えば花酵母を使用した清酒。通常日本酒に使用される清酒酵母とは異なり、花から培養された酵母で、”ナデシコ”や”カーネーション”"コスモス”など数種類が存在し、それぞれが香りや味を左右する重要な役目を担っている。この花酵母を使用した清酒を製造する蔵元も全国に存在する。

 他にも酵母ではなく、米以外の原料を加えた清酒もある。兵庫県伊丹市にある小西酒造では地元で収穫された自然薯を、これも地元のコシヒカリと共に原料として使用した「自然薯酒」を販売しており、かすかな自然薯の香りと、くせのないすっきりとした味を特徴としている。

 日本酒の”ご当地酒”は地酒という意見もあるだろうが、その製法も多様化しており、そこから造り出される味もフルーティで甘味が強いもの、種類も低アルコールや発泡性があるものと千差万別。地元のお店で味わうのも楽しみ方のひとつだが、観光客が手軽にお土産で手に入れることができる”ご当地酒”として、特徴的な日本酒が多く存在すれば、日本酒離れという現象を嘆くことはなくなるのだが。