毎年、十数万人の来場者を集める、アジア最大規模のIT技術とエレクトロニクスの国際展示会CEATEC2020(主催団体・情報通信ネットワーク産業協会、電子情報技術産業協会、コンピュータソフトウェア協会)が、今年は10月20日~23日の4日間にわたって、オンラインで開催された。
初めてのオンライン開催とあって、関連業界を中心に大きな話題を呼んだ今回のCEATEC2020は、スローガンも「CEATEC-Toward Society 5.0 with the New Normal(ニューノーマル社会と共に歩むCEATEC)」と掲げられ、withコロナ、Afterコロナ時代を意識したものとなった。
また、サイト上の展示エリアにも「企業エリア」、「Co-Creation PARK」とともに「ニューノーマルエリア」が設けられ、さらに「コンファレンスエリア」、「公式イベントエリア」が加わった5つのエリア構成で356社/団体が出展するオンライン展示が行われた。
主催者発表によると、会期中の登録来場者数は8,5,650名。ただし、オンライン開催により複数日にわたって入場した来場者が多かったことから、会期中の延べ来場者数は13万名を超えると発表 推測している。また、会期終了後も 新規の来場登録と入場を継続しており、12月31日まで各出展ブースをオンライン上で閲覧することができるので、最終的な数はまだまだ伸びそうだ。
また、同発表によると、会期中に実施したカンファレンスの聴講数は延べ105,210名で、昨年の28,228名を大きく上回った。中には1セッションで4,000名を超える聴講者を集めたものもあるという。これもオンライン開催ならではの効果だろう。
展示の中でも注目されたのが「CEATEC AWARD 2020」だ。
CEATECでは毎年、展示された技術や製品、サービス等の中から、出展者が事前に応募した出展品・案件について、「CEATEC AWARD 2020 審査委員会」が学術的・技術的観点、市場性や将来性等の視点において、イノベーション性が高く優れていると評価できるものを審査、選考し、CEATEC AWARD各賞を贈って表彰している。今回のオンライン開催においても同様に、選出された。
CEATEC AWARD 2020の総務理大臣賞に選ばれたのは、世界最高水準のスーパーコンピュータで、2021年度の共用開始を目指して富士通株式会社〈6702〉及び国立研究開発法人理化学研究所が開発した「スーパーコンピュータ「『富岳』」 」だ。
世界の他のシステムに対して総合力で卓越するシステムであり、と 世界No.1の性能と電力効率を両立した実用性、使うためのコンピューティングを両立させている点が高く評価されたという。もので、これからの日本の電子情報産業の新たな可能性と多方面での産業競争力強化に貢献することが期待されている。
また、今回のCEATEC2020のスローガンにも通じる「ニューノーマル社会への提案・共創カテゴリー」では、各部門で電子部品メーカーの受賞が目立った。
例えば、「ニューノーマル時代のデジタルまちづくり部門賞」でグランプリを受賞したのは、TDK株式会社〈6762〉の「ピエゾ環境発電によるホイール完結型センシング」だ。
タイヤが路面接地時に受ける反力を利用して発電を行うほか、その出力特性からさまざまな走行状態の検出も可能だという。車載部品として既に市場実績のあるピエゾ素子を応用している点や、環境適合性の高いタイヤ・ホイールのIoT化にむけた実現可能性が高く評価された。
同じく「ニューノーマル時代のデジタルまちづくり部門賞」の準グランプリを獲得したのは、ローム株式会社〈6963〉の「IoT時代の白物家電の待機電力極小化に貢献する、業界初のゼロクロス検知ICだ。
近年のIoT化加速に伴い、待機時もWi-Fi等ので通信に備える常時通電の家電が増えているが、今後、EUなど各国で待機電力の規制はが厳しくなるとみられている。そんな中、ロームは常時通電の家電において必ず搭載されているゼロクロス検知回路に着目し、検知に関わる消費電力を従来比で98%も削減することに成功したという。他のメーカーが見逃していたゼロクロス検知回路という未開の地に着目し、待機電力削減が大きく期待できるICの開発に成功した点が高く評価されての受賞となった。
ニューノーマル部門ではないものの、株式会社村田製作所〈6981〉も「非振動型広帯域超音波発生デバイス」でオープン部門賞の準グランプリを受賞している。同デバイスは熱により音波を発生させることで、残響が少なく広帯域な音波を発生できるもので、信号処理と組合せることで、高精度位置検知、材質検知、近距離検知などが可能となる。非接触のアプリケーションに最適で、ニューノーマル社会における貢献性が評価された。
オンライン開催の大きな利点の一つは、会期終了後にも各ブースを訪問し、製品や技術を閲覧できることだ。未入場の人はもちろん、すでにサイトを訪れた人でも、何度でも訪れることができる。すでに訪れたブースでも、見逃していたことや新たな発見もあるかもしれない。オンライン開催の利点を十分に活用して、これからのニューノーマル社会に役立ててもらいたいものだ。(編集担当:今井慎太郎)