新型コロナウイルス感染拡大の影響で、社会全体が大きな変化を迫られた2020年。
日本国内でも冬の深まりとともに感染者が爆発的に増加し、大晦日にはついに、東京都の新規感染者数が過去最高の1337人を記録するなど、混乱が膨らむ中での年越しとなった。政府も緊急事態宣言の再発出を検討中であることを表明しており、国民にも不安が広がっている。
しかし、各シンクタンクの見通しではおおむね、世界経済は徐々に回復に向かうと見ているようだ。その理由は、ワクチンの接種が始まったことで感染が徐々に減衰に向かうと想定していることにある。日本でもすでに、ワクチンの承認申請が進んでおり、昨年の12月には予防接種法改正案も成立し、供給についてもアストラゼネカ株式会社と契約を締結している。また、1月4日の記者会見の席上では、菅義偉首相が2月下旬までに接種が開始できるように準備を進めていると明言していることからも、異例の速さで承認が下りそうだ。
とはいえ、ワクチンの確保や接種体制の準備など、まだまだ課題は山積している。まずは、感染後の重症化率が高いといわれる高齢者や特定疾患を持つ方々から優先的に接種されるとして、ワクチン接種を望む全ての人にワクチンがいきわたるのは2022年になるという見方もある。ワクチン接種までの希望は見えてきたものの、日本の社会や経済にとっては、今年上半期はとくに正念場となるだろう。
そんな中、各企業が発表した年頭所感にも、コロナ禍に対する決意と姿勢が見てとれる。
例えば、昨年、親会社である日本電信電話株式会社によるTOBが行われたことでも大きな話題を呼んだNTTドコモの代表取締役社長・井伊基之氏は、2021年を「『新しいドコモ』への挑戦の年」と位置づけている。モバイルソリューションをはじめとする「ニューノーマル」を意識した取り組みを継続する一方、新たな料金プラン「ahamo」や5Gエリアの拡大などを推進し、主にNTTコミュニケーションズとの連携を深めることで、これまでモバイル中心であった提供領域を、固定ネットワークや上位レイヤーを含めたトータルサービス・ソリューションに拡大するとしている。
ロボットを活用した無人の住宅展示場を住宅業界で初めて導入するなど、コロナ禍にいち早く対応した木造注文住宅メーカーの株式会社アキュラホームの代表取締役社長・宮沢俊哉氏は、2020年は、外出自粛や在宅時間の増加で住まいの大切さを再認識した年だったと述べた上で、同社がこのコロナ禍の混乱の中においても、 コロナ禍以前に決定した当初の事業計画を超過達成する見込みであることを報告している。同社ではコロナ禍で社会が混乱する中、将来の大変革を見据え「理想のつくり手、住まいとは」について試行錯誤し、クリーンモデルハウス宣言や、ウイルス対策を徹底した新生活様式の家を発表するなど、通常3年かかるような戦略を、矢継ぎ早に実践してきた。宮沢社長曰く、環境悪化に対し万全の策を取り、従業員とその家族、顧客の安心・安全を最優先においた様々な施策を実行し、環境や社会、従業員に加えステークホルダーと共に協力しあったことが、未曽有の災禍にも負けない大きな力になったという。また、同社では2021年1月1日より「SDGs推進室」を設置し、さらにSDGs活動・ESG経営を推進し、伐材等を原料としたカンナ削りの「木のストロー」の普及などをはじめとする、地域貢献や社会貢献、環境貢献にも力を注いでいくという。
また、プロフェッショナル人材に特化したビジネスマッチングサービスや転職支援サービスを行う株式会社みらいワークスの代表取締役社長・岡本祥治氏は、同社が昨年9月に実施したアンケートの結果をもとに、新型コロナウイルスの感染拡大によって、企業への帰属意識など「働くこと」と「人生」への価値観の変化があったと述べている。その一方で、上場企業が希望退職を募る数が増えていることにも言及し、企業は自社に在籍する社員が「人生100年時代」を生き抜く為のサポートをするべきであり、社員に対して他の会社でも活躍できるような教育やセカンドキャリアに向けた自己啓発のサポートをするといった活動が必要となっていくと考えているという。さらに2021年にはWithコロナからAfterコロナへと移行するに伴い、価値観の変化を具体的な行動に移す人が増えると予想し、既存サービスのさらなる拡大に加え、様々なプロフェッショナル人材向けのサービスを立ち上げるとしている。
年頭所感ということもあるが、コロナ禍でも業績が好調な企業は軒並み、コロナ対応だけに追われるのではなく、その先を見据えたポジティブな行動をすでに起こしているという共通点が見られる。もちろん業界によっても状況は大きく異なるだろうが、コロナ化を憂いて停滞するのではなく、アキュラホームの宮沢社長のように、通常数年かかるような戦略を矢継ぎ早に実践して、実現させていく行動力とスピード感が、今の経済に最も求められていることなのではないだろうか。(編集担当:藤原伊織)