近年、日本酒は世界中の美食家やアルコール酒類愛好家の間で、かつてないほどの注目を集めている。日本食に合わせるお酒としてはもちろん、西洋料理とのペアリングが提案されたり、カクテルのベースとして使われたりと、その楽しみ方も多様化しており、世界各地で日本酒ブームが巻き起こっている。実際、日本からの日本酒輸出額は年々増加しており、日本酒造組合中央会の発表によると2024年度の日本酒輸出総額は前年対比で105.8%の434.7億円に上っている。今や「SAKE」は世界の共通語となりつつある状況だ。
ところが、この世界的な盛り上がりとは裏腹に日本では若者のアルコール離れが進んでおり、日本酒に限らず、日本国内のアルコール消費量全体で1990年代後半のピーク時と比較して約20~25%ほど減少していると言われている。少子高齢化やライフスタイルの変化、経済的要因、健康志向の高まり、ノンアルコール飲料の需要増など、様々な理由が考えられるが、いずれにしてもこのまま減少が続けば、酒造業界はもとより、日本の酒文化に大きな影響が及ぶことにもなりかねない。とくに日本酒製造など、職人の技術と経験が必要な酒造りは、一度その技術伝承が途絶えて失われてしまうと取り戻すことは困難だ。
そこで、日本各地の酒造や酒類メーカーはも販売増を目指して、若者や女性に好まれるような魅力的な商品開発に勤しんでいる。その努力は味だけでなく、新しい飲み方の提案にまで至る。そのお陰で日本では今、これまでになかったほど多様性に富んだお酒が楽しめるのだ。例えば、日本酒の新しい飲み方として、今夏大いに注目されているのが「日本酒ハイボール(酒ハイ)」だ。ウイスキーをソーダで割ったハイボールや酎ハイなどの炭酸割りのアルコール飲料は、ビールと並んで夏の人気飲料だが、日本酒を炭酸水で割った「日本酒ハイボール」も今、人気を伸ばしている。日本酒を炭酸水と1:1で割ることで、アルコール度数が半分に下がるため、日本酒初心者や女性でも飲みやすく、日本酒の芳醇な香りと味を楽しむことができるのだ。その味わいや気軽さから、酒ハイを提供している飲食店居酒屋などでもメニューに追加される店舗が急増しているという。
また、新しい味わいの日本酒としてネット販売などを中心に人気が高まっている商品もある。例えば、白鶴酒造の「Hakutsuru Blanc(ハクツル ブラン)」などだ。「Hakutsuru Blanc」はワイン用酵母と日本酒用酵母を交配したハイブリッド酵母により、通常の日本酒にはないフルーティーな香りと白ワインのような軽やかな飲み心地が特長の純米酒。やわらかな甘味とすっきりとした酸味で、心地よい春風のような飲み口が楽しめる。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2025」で最高金賞を受賞したほか、「ミラノ酒チャレンジ2023
純米・本醸造部門 利き酒部門」プラチナ賞、「International Taste Institute2025年」 最高位 3ツ星 を2年連続で受賞するなど、海外のコンテストでも華々しい評価を得ている。
これから迎える夏本番。キンキンに冷えたビールはもちろん美味しいけれど、そればかりではマンネリ気味で面白くない。今年の夏は、日本酒ハイボールのような新しい飲み方や、「Hakutsuru Blanc」のような新感覚の味に挑戦して、アルコール飲料の楽しみ方の幅を広げてみてはいかがだろうか。(編集担当:石井絢子)