新型コロナウイルス感染症の影響は変異種の発生・広がりによって収束する気配はない。日本においてはワクチンの調達・接種も遅れており当面は経済に大きな負の影響を及ぼすとみられる。雇用に対する悪影響は時が経つにつれて深刻さを増しており、既に今年の上場企業の早期・希望退職は前年の倍のペースで実施されている。
コロナの影響による事業縮小に伴う雇用への悪影響を回避するための雇用調整助成金の特例措置は4月末で終了の予定だが、上場企業の雇用調整助成金の申請は増加傾向で推移しており、コロナ禍の長期化に伴い今後、雇用環境はさらに悪化することが懸念される。
3月23日に東京商工リサーチが上場企業の「雇用調整助成金」の申請状況等を調査したレポートを公表している。これによれば、2月末までに決算資料などから雇用調整助成金の計上・申請が判明した上場企業は690社にのぼり、前月から42社増加している。これは全上場企業の17.9%となり、約2割の上場企業が雇用調整助成金の特例措置を申請していることになる。計上額は合計3559億円に達し、前月と比べ681億円、23.6%増加している。増加幅は前月の409億円増を上回り申請が加速しているようだ。今後4月末に向け対消費者業種を中心に申請はさらに加速するとレポートは見込んでいる。
業種別では、製造業が268社で最多、次いで観光を含むサービス業が134社、小売業131社、運送業44社の順だ。利用客が落ち込んだ航空・鉄道などは1社あたりの計上額が巨額となっているが、これらの業種では今後しばらく需要回復は期待できず、4月末に向けてさらなる追加計上も見込まれる。計上額別では「1億円未満」が全体の39.7%を占め最も多く、次いで「1億円以上5億円未満」が同32.2%となっている。1月末と比べ「1億円未満」のみ社数が減少しているが、これは中堅企業などが追加計上したことで計上額が1億円を超えたことによる。
3月19日、助成金23億円を計上し、さらに希望退職者募集も実施していたブライダル大手で東証1部上場のワタベウェディングが事業再生ADRを申請している。長引くコロナ禍で客足が戻らず雇用維持に苦慮しながら破綻に至るケースも出てきている。宣言は解除されたものの時短要請は続いており、GoToトラベルも再開延期された。レポートは「労働集約型の企業を中心に、最後まで雇調金の特例措置を活用する企業は増える」と見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)