昨年2月に新型コロナウイルス感染症の流行に伴う外出自粛が国民に呼びかけられてから1年以上が経過した。飲食店は緊急事態宣言下で休業や時短をせまられ、中でも酒類の提供や接待を伴う飲食店は営業を著しく制限されている。これらの業態は常連客頼みの零細店も多く、長引く自粛ムードは常連客離れを生み、一度客足が離れるとそれを戻すことは極めて困難で、営業継続それ自体が危うくなっている。
4月8日、東京商工リサーチが「2020年度、バー、スナックの倒産状況」についてレポートを発表している。これによれば、「新型コロナウイルスの感染拡大で、街角のバーや老舗のスナックに淘汰の波が押し寄せている」状況だ。
2020年度の「バー、スナック」の倒産は前年度比2.7%増の75件で、過去10年間では東日本大震災の11年度と景気後退局面入りをした18年度の各78件に次ぐ3番目の高水準となった。全体としては前年度からの減少幅は小さい。しかし、負債額の大きさで見ると規模により大きな格差がみられる。負債1000万円以上の倒産は前年度比17.9%減の55件と減少しているのに対し、負債1000万円未満の小・零細規模での倒産は同233.3%増の20件、前年度の3.3倍と大幅な増加で、小規模店での破綻増加が著しい。
負債額1000万円未満20件のうち9件が個人経営であり、コロナ禍の影響が直撃し事業継続が困難になった小・零細規模の脱落が目立つ。バーやスナックは個人経営店が多く、地域に根ざした常連客中心の大人の社交場として営業を続けてきた店舗が多数派だ。しかし、コロナ禍で営業自粛や時短営業の要請を受け、また長引く自粛ムードの中で三密回避の動きが広まり、接客を伴うバーやスナック、クラブの多くが顧客とのつながりが薄れ、客足が遠のき、これが売上の落ち込みにつながった。
一定規模以上の企業は資金繰り支援策や休業補償、雇用調整助成金の特例措置などで何とか営業を維持しているが、常連客を失った零細店舗では新たな資金調達も一時しのぎにとどまる可能性も高く、事業の継続自体を断念する「あきらめ倒産」が増加しているようだ。レポートでは「今後は休業中の店舗が再開を断念し、債務整理などを進める動きなども懸念され、小規模事業者を中心にバー、スナックの倒産はさらに加速する可能性が強まっている」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)