2020年度、コロナ禍の倒産件数は各種支援策が奏功し前年度より減少している。感染者が増加傾向になるごとに休業や時短要請を受けてきた飲食業でも協力金効果から酒場・バーなどの酒類関連を除き全体として倒産件数は前年度比マイナスだ。
しかし、オリンピックの延期やインバウンド需要の喪失、GOTOトラベルの停止など需要回復の見通しが立たない観光業・宿泊業は大打撃を受け破綻するケースが急増となっている。昨年暮れからの感染者数増加に伴い予約のキャンセルが相次ぎ、観光地エリアにおいては客室稼働率が10%台まで低下したホテルもあったようだ。
4月12日、帝国データバンクが「宿泊業者の倒産動向調査 (2020年度)」の結果レポートを公表している。これによれば、20年度の宿泊業者の倒産件数(負債1000万円以上、法的整理)は前年度比66.7%増の125件、増加率では過去最高を記録した。このうちコロナ関連倒産は72件に上り、全体の57.6%を占めている。年度上半期の時点で73件と前年度の75件に差し迫っていたものの、下半期は「GOTOトラベル」や雇用調整助成金などの支援策が奏功し52 件と減速した。
業態別では、「ホテル・旅館」117件で全125件中の93.6%を占めており、前年度比で約1.7倍の増加となっている。インバウンド需要の喪失し、緊急事態宣言に伴う休業や予約キャンセルで事業継続が不可能になったケースが目立つ。次いで、カプセルホテル「ファーストキャビン」などの破綻があった簡易宿所の5件が続く。従来であれば、スポンサーやM&Aで再建可能であったが、コロナ禍の長期化でスポンサーが見つからず倒産に至ったケースもある。地域別には「中部」の30件が最多で、うち「長野県」の10件が最も多く、団体旅行やスキー客の減少に新型コロナが直撃した。
大多数の宿泊業者は昨年より政府の各種支援策やコロナ緊急融資で延命している状況だ。唯一需要回復につながった「GOTOトラベル」も昨年12月から全国で停止されている。感染拡大が続く中、政府はGOTO再開に慎重な姿勢を見せており、年間で最も需要が高まるゴールデン・ウイークまでの再開は期待できず、需要回復の目途は立たない。レポートは「今後も全国的に宿泊業の倒産が高水準で推移していくだろう」と見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)