日産と早稲田大学、EVモーター磁石からレアアースの高純度高効率回収技術、共同開発

2021年09月05日 08:36

Waseda Univ.×Nissan

早稲田大学と日産自動車が、電動車用モーター磁石からレアアース化合物を高純度で効率良く回収するリサイクル技術を共同開発

 早稲田大学と日産自動車は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて2020年代中頃の実用化を目指した実証実験を開始し、共同で開発すると発表した。

 具体的にはモデルライフを終えたEVなど電動車用のモーター磁石からレアアース化合物を高純度で効率良く回収するリサイクル技術を共同開発し、2020年代中頃の実用化を目指し、実証実験を開始したと発表した。

 現在、世界の産業界ではグローバルな気候変動に対応し、カーボンニュートラル社会を実現するための取り組みに積極的だ。なかで自動車業界では車両の電動化を積極的に推進している。

 これら電動車のモーターの多くに使用されるネオジム磁石には、ネオジム、ジスプロシウムなどのレアアースと呼ばれる希少元素が使用。 レアアースは資源の偏在や需給バランスによる価格変動が懸念され、加えて採掘・製錬時に生態系への負荷も伴い、その使用量削減が課題となっている。

 日産はこの貴重な資源を有効に使用するため、2010年以降、設計段階でモーター用磁石のヘビーレアアース(重希土類)の使用量削減に取り組んできた。また、出荷基準を満たさず、クルマに搭載しなかったモーターを分解し磁石を取り出して磁石サプライヤーに還元してきた。

 しかし、現在、モーターの磁石からレアアースを取り出す工程は、手作業による磁石の分解、取り出しが必要であるため、今後さらなるリサイクルを推進するには、プロセスの簡便化、コストの低減が課題だった。

そこで2017年より、日産は非鉄金属のリサイクルと製錬に関する研究で高い実績のある早稲田大学創造理工学部の山口勉功研究室と共同で、同校の大型炉設備を使用し、電動車用のモーターの磁石からレアアース化合物を回収する研究を開始した。そして、2019年度には、高温で融体を取り扱う「乾式製錬法」により、モーターを解体せず、高純度なレアアース化合物を効率よく回収する技術を確立した。

 リサイクル技術の実験では、モーターに使用されたレアアースの98%を回収できることが確認できている。また、磁力を取り除く作業や、磁石を分解して取り出す作業が不要であり、プロセスを簡略化することができ、従来の方法と比べ作業時間を約50%削減することができるという。

 今後は、実用化を目指した実験を続けると同時に、使用済み電動車に搭載されたモーターを回収し、リサイクルするスキームの構築を進めるとしている。(編集担当:吉田恒)