2019年12月初旬、中国の武漢市で新型コロナウイルスの第1感染者が報告されてから、丸2年が経過した。世界中で猛威を振るった新型コロナは、未だに感染者を増やしている。話題のオミクロン変異株は急拡大を加速しており、オランダではロックダウン(都市封鎖)が開始された。欧州の他の国でも、行動制限が強化される可能性が高まりつつある。
一方、日本の感染状況は、世界に比べてかなり落ち着いた状態だ。要因の一つとして考えられるのは、ワクチン接種率の高さだ。厚労省の調べでは、12月時点でのワクチン総接種回数が約2億回。2回接種完了者が全国民の8割近くにのぼり、ワクチン接種の開始時期の遅さからすれば、驚異的なハイペースと言えるだろう。このハイペースを支えたのは、医療機関や自治体、そして職域接種だ。
企業や大学等、職域単位でワクチンの接種を行う「職域接種」が、再び注目を集めている。オミクロン変異株に備えた3回目接種への動きが、より具体化し始めた。通常、ワクチン接種は医療機関や自治体の会場で行われるが、感染者数の状況によって治療や手続きなども重なり、負担が集中してしまう。その負担を少しでも軽減する為に職域接種は重要視されており、政府からも企業や大学へ向けて、積極的に協力を呼びかけている。
12月13日から申請が開始された職域接種に、いち早く反応した企業も多い。通信大手のKDDI株式会社は、申請初日に申し込みを行なった。前回の職域接種の際、予定を前倒しして接種を始めており、原則8ヶ月以上の間隔をクリアしてくる従業員も出てくるため、早ければ3月からの開始に向けて、調達を急ぐ構えだ。社員、及びauショップやコールセンターを含めた、全国規模の体制を整えた実績があり、速やかな準備体制の構築が期待できる。
大手ハウスメーカーのアキュラホームグループも、前回同様、今回の職域接種の申請を行うことを決定した。同社の接種対象者は、従業員やその家族のみならず、取引業者や取引のある地域の工務店、その従業員や家族、更には家を建築した顧客にまで至る。きめ細かい接種機会の提供を実施し、9000人の接種を完了した実績がある。職域接種のネックとなるワクチンの打ち手確保は、顧客や地域の医療機関の協力を得て実施することにより、速やかな人員確保と大幅なコスト削減に成功している。まさに職域接種の理想的なモデルケースと言えるだろう。
職域接種の申請は、企業だけではない。前回の職域接種にも参加した広島大学だ。既に申請を行なっており、前回の職域接種を終えた時期に合わせて、3月下旬からの実施を想定している。学生たちに向けて、接種を希望するか否かの意向調査の行うなどして、準備を進める方針だ。また、3月に卒業予定の学生についても、大学で接種を行う方向で検討している。年齢によって副反応に違いがあり、特に若者は副反応が出やすいというデータもあるため、より丁寧な聞き取りを行なっていくそうだ。
もちろん、ワクチン接種は義務ではない。ワクチンを打たないという自由は守られている。ただ、同様にワクチンを打ちたいという自由も守られるべきだ。3回目のワクチン接種の混乱を避け、速やかな接種を行う為には、接種できる窓口を複数確保することが急務となる。その点において、職域接種は効率的で合理的な方法であり、今後も重要視されていくだろう。これまでの新型コロナウイルスは、欧米で感染爆発が起こった後、1?2ヶ月遅れて日本の感染者が増えるという傾向がある。家族や親戚、友人と会いたい時期だからこそ、今一度の感染対策の徹底を注意していきたい。 (編集担当:今井慎太郎)