【コラム】衆院小選挙区「10増10減」は確実に実現せよ

2022年05月15日 11:09

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国会議員1人を増やすだけで、どれだけの費用と人材が必要になるか

 1票の格差是正を図る観点から衆院選挙区画定審議会が小選挙区の「10増10減」を示して以来、衆院議長の細田博之氏から「10増10減でなく3増3減」、「(毎月の歳費)100万円しかない」「(国会議員)3人くらい増やしても」など、国民感覚からブレブレの発言が相次ぎ、与党内からも批判の声があがっている。国民からの批判は当然。

 発端は「10増10減」に異論を唱える細田氏が、持論を正当化するため展開していると推察する。細田氏は10日開かれた自民党議員のパーティで「議長になっても、毎月もらう歳費は100万円しかないんですよ。(上場)会社社長は1億円は必ずもらうんですよ」と発言。

 さらに「たくさんの議員を出して、盛んな議論をしてもらうのがいい。月給100万円未満である手取りの議員を多少増やしたって、バチは当たらない」ととんでも発言。

 国会議員1人を増やすだけで、どれだけの費用と人材が必要になるか。目の前の国会議員の背後にいる人やものが細田氏には見えていない。こんな視点の衆院議長でよいのか、疑問に感じる声もある。

 国会議員には歳費以外に最近名称を変えた「調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費)」が月額100万円、夏冬の期末手当、JR無料パス、公費で賄われる公設秘書3人(うち1人は政策担当秘書)、議員控室、これだけでも多額の税金が必要になっている。

 また国会議員歳費は公務員事務方トップ(事務次官)の報酬より上になる立てつけになっている。立憲の小川淳也政調会長の指摘の通り、細田氏の発言は「極めて不適切」。小川氏は「細田議長に抗議したい」としているが強く抗議していただきたい。

 小選挙区の10増10減では減対象に安倍晋三元総理の山口、長く幹事長を務めた二階俊博氏の和歌山も入っている。まさか、自民重鎮のために異論を唱えているのか、とは思いたくもないが、自身が衆院議長の重責にあることを自覚し、もっと慎重であってしかるべき。

 こうした中、金子恭之総務大臣は衆院選挙区画定審議会の区割り改定案を踏まえ、速やかに法整備を行う考えを明確にしている。区割り審は6月25日までに区割り改定案の勧告を行うことになっている。この勧告に基づき、法整備を図り、次期、衆院選挙では新しい区割りで選挙が実施されるよう、迅速な対応を期待する。

 10増10減で増えるのは東京(現行25から30に5増)神奈川(18から20に2増)と埼玉、千葉、愛知(それぞれ1増)。

 減るのは、安倍氏の山口はじめ二階氏の和歌山のほか、宮城、福島、新潟、滋賀、岡山、広島、愛媛、長崎の10県。現行の選挙制度そのものに問題があることは、中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変更以来、誰もが感じていること。むしろ、中選挙区制の方が民意を反映できたと筆者は感じている。民意を反映できる選挙制度へ、制度そのものの在り方の議論を深めて頂きたい。(編集担当:森高龍二)