2021年4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され1年以上が経過している。これにより65歳までの雇用確保義務に加え70歳までの就業確保措置をとることが努力義務として追加された。この法改正の趣旨は、「少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、 働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図ることが必要」などとしている。少子高齢化の中で生産年齢人口は急速に減少し人手不足が深刻化している一方で、人生100年時代とも言われ、働く意欲のある高齢者が少なくないのも事実だ。とは言うものの企業側にとっては高齢者を戦力として活用するためにはモチベーションや人件費など様々な課題があるようだ。
6月29日、IT企業のワークスヒューマンインテリジェンスが「高年齢者雇用安定法改正に準じた対応に関する状況調査」(調査期間:4月11~28日、有効回答:92件)の結果レポートを公表している。施行から1年経過した改正高年齢者雇用安定法への対応(70歳までの就業帰化確保努力義務)を聞いた結果では、「対応を行った」と回答した企業は32%と3社に1社に過ぎず、7割の企業が具体的対応を行っていないようだ。対応した具体的内容は、「70歳までの継続雇用制度」が26.7%、「70歳以上への定年の引き上げ」が3.3%、「70歳までの継続的業務委託契約制度」2.2%となっている。
定年延長についての課題については、「対象者の報酬水準」が58.7%で最も多く、次いで「対象者のモチベーション」が55.4%と続き50%を超えており、「人件費の高止まり」39.1%と続いている。定年延長についての今後の取り組みについては「定年延長後の報酬水準の見直し」を検討している法人は31.8%にのぼり、また「定年年齢の引き上げ」も27.3%存在する。定年以降の継続雇用者についての課題について聞いた結果では、「対象者のモチベーション」が71.1%と断トツで多く、「対象者の報酬水準」が53.0%と半数の企業を超えて多くなっており、また、「対象者と働く社員の働きにくさ」も31.3%と続いている。
WHI総研シニアマネージャーの伊藤裕之氏の総括では、「多くの法人にとってメリットを感じない」、「中高年層の活性化に対する効果的な打ち手が不明」などが挙げられており、「現在の40歳代後半~50歳代がシニアとなる前に何らかの対策が必要」であるとしている。(編集担当:久保田雄城)