LCCは日本の空をどう変える?

2012年11月26日 11:00

 2012年。ローコストキャリア (Low-Cost Carrier)、いわゆるLCCと呼ばれる新規の国内格安航空会社が立て続けに3社、就航を開始したことで、日本の空は大きな変化を迎えた。

 まず、3月には、ANAと香港の投資会社により設立され、国内初のLCCをうたう「Peach Aviation」が国内線を就航。次いで5月には、同社が日本(関空)‐韓国(仁川)間で国際線を就航させたのを皮切りに、7月にはJAL、オーストラリア・カンタスグループ、三菱商事の共同で設立された「ジェットスター・ジャパン」が国内線の就航を開始、翌8月にはマレーシアのエアアジアと全日本空輸により設立された成田空港を拠点とする「エアアジア・ジャパン」が国内線の就航を開始した。

 2012年11月現在で、ジェットスター・ジャパンは国内線のみ、エアアジア・ジャパンも10月に国際線を就航させたものの、航路は日本(成田)‐韓国(仁川)の一航路のみ。対するPeach Aviationは、韓国のほか、香港、台湾と航路を増やしており、現段階で優劣を論じるのはいささか早急な気もするものの、一歩先んじている感は否めない。

 これら3社に加え、既存の大手国内航空会社はもとより、2000年代後半から国際線にすでに参入している外資系のLCC各社も加え、今後、三つ巴、四つ巴の空の覇権争いが展開されることが予想される。

 消費者にとっては、サービスと料金で選択肢が増えるのは喜ばしいことであり、各社が競い合って航空サービスの向上に努めてくれれば理想的なのだが、各社それぞれの思惑や台所事情もあるようで、なかなか一筋縄ではいかない様子。また、日本にLCC自体が根付き、成功モデルとなりえるのかは、まだまだ未知数で、判断しかねるところがある。

 そもそも、LCCとは名乗っていないものの、1998年に航空業界の規制緩和を機に「スカイマーク」と「北海道国際航空」という、日本の格安航空会社2社がすでに就航している。とくにスカイマークは、海外LCCのビジネスモデルを踏襲し、使用機種の統一やサービスの簡素化などLCCに近いビジネス展開を行なっている。

 ところが、2社とも経営的には厳しいようで、北海道国際航空は経営不振により、一度は民事再生法適用を申請し、全日本空輸(ANA)の支援を受け、2005年3月に再建している。スカイマークの方も、現在は拡大戦略をとるまでに好調を維持しているものの、2003年頃には累積赤字が130億円に達し、一時は東証マザーズの上場廃止の危機に瀕するなど、ここまでの道のりは決して順風満帆といえるものではなかった。

 国内線での航空機利用が他国に比べて少ない日本では、LCCという業態は難しいのだろうか。また、LCCに不慣れな日本人からは、どうしてもこれまでの大手航空サービスと比較されて「サービスが悪い」とクレームを受けることも多いという。

 日本でLCCがビジネスとして成功するには、まずは値段の競争よりも、利用者の意識を教育するところから始める必要があるのかもしれない。