企業や団体における社会貢献活動「CSR」が重要視される昨今、様々な分野で行われるCSR活動の中でも、とくに未来を担う子どもたちの教育に関する、いわゆる「教育CSR」への関心が高まっている。近年、持続可能な社会の実現に向けたSDGsが注目されているが、持続可能な社会づくりはまず「人」が基本となる。企業にとっても、未来の人材を育てることは、企業活動を持続するためも欠かせないことなのだ。
教育CSRの代表的なものに、企業の技術者やエキスパートが教育現場に出向いて特別授業や指導を行う「出前授業」がある。例えば、コニカミノルタ株式会社では、中学生や高校生を対象に「コピー機のしくみを学ぼう」という授業を開催。静電気の性質を利用した「コピー」のしくみを学ぶことで最先端の技術を知り、電気機器業界に興味を持ってもらうことが狙いだ。
また、「出前授業」でも時節柄、オンラインで行われているものもある。コンビニ業界大手のセブンイレブン・ジャパンは、神奈川県立茅ヶ崎西浜高等学校で約一時間にわたるオンライン出前授業を開催。同社のSDGsの取り組みの中から、「食品ロス削減」と「プラスチック 対策」の取り組み事例を紹介した。生徒たち自身も頻繁に利用するコンビニで行われている取り組みとあって、SDGsをより身近な問題としてとらえる良い機会となったのではないだろうか。
出前授業だけでなく、コンクール形式の教育CSRもある。
蜂蜜やローヤルゼリーなど、ミツバチ産品の製造販売を行う養蜂業大手の山田養蜂場では毎年、自然環境の大切さや人との関わりを感じられるミツバチを描いた絵画を募集している。第10回となる今年の「ミツバチの一枚画コンクール」には、日本国内だけでなく、中国やフィンランドなど海外7つの国と地域から計19633点(国内:19209点、海外:424点)の絵画が集まった。厳正な審査の結果、計67点の入賞作品が決定。10月30日には東京都中央区築地の浜離宮朝日小ホールで表彰式が行われた。
コロニーを形成して集団生活するミツバチは「社会性昆虫」ともいわれる生き物だ。また、ミツバチがいなくなると「森が消える」と言われるほど、生態系の維持に深くかかわっている。森が消えれば、海の生態系も崩れてしまう。自然が失われれば、人も生きてはいけないのだ。ミツバチを描くことによって、子どもたちの心にも、個々のつながりの大切さや、自然を守ろうという意識が芽生えるのではないだろうか。
また、同コンクールでは「ミツバチを描くことでSDGsについて共に考え、取り組みたい」という趣旨のもと、来年、作品の応募点数と同じ19633本の苗木を国内外で植樹する予定だという。少子高齢化の社会では、子どもたち一人ひとりが次の日本を担う国の宝だ。豊かな教育は、豊かな日本の未来につながる。企業の教育CSRの意味は今後ますます、大きなものになっていくだろう。(編集担当:今井慎太郎)