世界と日本で異なる「森林問題」 CSR活動から読み解く解決への糸口とは?

2021年12月31日 06:41

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日本の森林面積は、過去50年間を見ても、実はそんなに変わっていない。一見問題ないように見えるが、実は問題大アリなのだ

 「森林問題」と聞いて、森林破壊を思い浮かべる人が多いだろう。世界自然保護基金(WWF)が発表した報告書によると、2004年から2017年までの間に、世界24カ所で約4300万ヘクタール以上の森林が消失したそうだ。この広さは、日本の国土の1.2倍に相当する。24カ所は発展途上国が多く、商業的な農業用地として、又は安い木材を先進国に輸出する為に、植林地を開拓することが、森林破壊の大きな原因と考えられている。今後CO2削減を目指す世界にとって、不都合な事実となっている。

 一方、日本の「森林問題」は、内容が大きく異なる。日本の森林面積は、過去50年間を見ても、実はそんなに変わっていない。一見問題ないように見えるが、実は問題大アリなのだ。海外の安い木材を輸入することで、国内の森林伐採が減少し、林業の衰退を招いてしまった。計画的な森林への手入れが行われなくなった結果、古い樹木のCO2吸収量が減り、土壌が痩せてしまい、土砂災害の危険性が高まったそうだ。同じ「森林問題」でも、世界と日本では大きく異なっている。

 この異なる2つの「森林問題」に対して必要なのは、植林活動や、森林の管理など、双方地道な努力が必要とされる。その取り組みに、国内企業が社会貢献活動の一環のCSR活動として、既に動き始めていることはご存知だろうか。

 国内大手の富士フィルムホールディングス株式会社では、富士フィルム労働組合が主体となり、継続的に従業員を海外に派遣し、植林活動を行っている。「緑の協力隊」と称するこのCSR活動は、1998年・中国での植林活動から始まり、活動20周年となる2017年を機に、現地法人に活動を移行した。現在は、新たにベトナムに活動の場を移し、マングローブ林の再生に取り組んでいる。

 国内流通グループのイオン株式会社も、植樹活動を行っている企業の一つだ。1991年から植樹活動を開始し、その土地に自生する樹種を中心に植樹することで、地域に根ざした森を育てることを目標としている。国内を含め、中国やマレーシア、タイ、インドネシアなど、アジア各国での活動に注力している。2020年には、これまでの植樹本数の累計が1222万本に達したそうだ。地道な努力は今もなお続いている。

 国内の「森林問題」に取り組んでいるのが、大手酒造メーカーの白鶴酒造株式会社だ。同社は、国土交通省が主催する、六甲山の整備・保全活動を目的としたボランティア「森の世話人」に賛同し、昨年末から活動に参加している。急峻な地形の六甲山は、もろく崩れやすい花崗岩で出来た地質の為、土砂災害が起こりやすい山だ。しかし花崗岩には、水を通すとろ過し、不純物を取り除き、浄化する作用があり、酒造りにおいて必要不可欠な名水を育んでいるのも六甲山だ。自然豊かで災害に強い六甲山の森づくりは、地域にとっても、灘五郷の酒造りにとっても、重要な取り組みと言えるだろう。

 SDGsやカーボンニュートラルの取り組みなど、世界で共通の問題を取り上げることは非常に重要だ。ただ、共通の問題に対して、解決策は一つではない。「森林問題」を一つ取り上げただけでも、世界と日本では異なっているのだ。解決に向けた過程の中で、より国や地域に根ざした解決方法を探っていく方が、結果として問題解決に繋がっていくのではないだろうか。(編集担当:今井慎太郎)