投資の新基準として注目される「ESG」 国内企業のランキングに高まる期待

2021年12月19日 08:37

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グローバル化の進んだ現代社会では、いかに環境に配慮し、社会に貢献し、それを実行する組織が整えられているかが、評価基準のトレンドとなっている

 企業の評価は、時代によって変化する。少し前であれば、事業規模や社員の数、拠点の数や売上高で評価していた時代があった。しかし、グローバル化の進んだ現代社会では、いかに環境に配慮し、社会に貢献し、それを実行する組織が整えられているかが、評価基準のトレンドとなっている。多くの投資家が、投資する企業のCSR活動などに注目する傾向も、時代の流れによるものと言えるだろう。

 上記の「環境(Environment)」、「社会(Social)」、「ガバナンス(Governance)」の頭文字を取った「ESG」の観点から、企業を分析して投資を行う「ESG投資」が、近年注目を集めている。現在の財務状況だけでは紐解けない、将来の企業価値を見通す上で、ESGの重要性が高まりを見せている。このような情勢の中、ESG投資の大手格付け機関・EcoVadis社が発表した2021年サステナビリティ調査において、複数の日本企業が躍進しているのはご存知だろうか。

 電子部品メーカーのロームは、世界160ヶ国、200業種にわたる約80,000社の企業を対象にした同調査において、上位1%相当の最高ランク、「プラチナ」評価を初めて獲得した。「環境」、「労働と人権」、「倫理」、「持続可能な調達」の4つの観点から企業の持続可能性を評価する調査で、2050年CO2 排出量ゼロを掲げている同社は、再生エネルギーの積極導入や緑化整備などの取り組みが認められ、「環境」分野は最高評価となる「優秀」を獲得。「労働と人権」「持続可能な資材調達」でも「高水準」の得点を獲得し、プラチナ評価を得ることが出来たそうだ。

 更に同社は、国際環境非営利団体CDPの水資源管理に関する調査において、約13,000社のうち、上位2%しか選ばれない最高評価の「CDP水セキュリティ Aリスト」企業にも選定された。半導体製造で欠かせない水資源の再利用率を高め、環境負荷の軽減を目指す取り組みが評価された結果だ。サステナビリティにおける先進企業として評価されたことは、今後の展開の励みになるのではないだろうか。

 総合建設会社である竹中工務店も、EcoVadis社の調査において「プラチナ」評価を獲得した。ロームと同じく2050年にCO2 排出量100%削減を目指した取り組みや、「取引先活動ガイドライン」設定等の持続可能な調達のための取り組みが、評価項目の「環境」と「持続可能な調達」について、高評価を得ることに繋がったそうだ。「最良の作品を世に遺し、社会に貢献する」という同社の経営理念を、まさしく具体化させた結果と言えるだろう。

 大手製紙業の日本製紙株式会社も、同調査において上位5%にあたる「ゴールド」を獲得している。同社は今年の5月に「2030ビジョン」を発表し、「木とともに未来を拓く総合バイオマス企業」として、2050年のカーボンニュートラルを目指している。社会・環境の持続性と、企業としての成長を両立させるサステナビリティ経営を推し進めていくそうで、今後のランクの推移にも注目していきたい。

 利益のみを追求する企業活動は、短期的に成長ができたとしても、社会への悪影響が生じてしまった場合、持続的な成長は見込めなくなってしまう。今後、ESGの評価によって、将来的な企業の浮き沈みが左右されると言っても過言では無いだろう。その評価ランキングで高評価を得ている日本の民間企業が多いことは、素直に嬉しく、頼もしい限りだ。とかく欧州に比べ、環境問題で遅れを取っていると言われることが多い日本だが、民間企業には当てはまらないと言えるだろう。今後、「民」が「官」を引っ張り上げる構図に期待したい。(編集担当:今井慎太郎)