図書館に拉致問題に関する図書の充実をと「特定失踪者家族会」の要望通りに内閣官房が、文科省に伝え、文科省は全国都道府県・指定都市図書館・学校図書館担当課に「事務連絡」として伝達した問題。
公益社団法人日本図書館協会は「今回の文書は今後、外部からの圧力を容認し、図書館での主体的な取り組みを難しくする流れとなる怖れがある」とし「文科省の今回の文書は是認できない」と断じた。
日本図書館協会は「図書館での資料の充実や展示の開催はテーマがどのようなものであっても、外部から一律に要請されることではなく、各館が地域の事情や利用者のニーズなどを踏まえて主体的に考えて取り組むべき」と強くけん制した。
また「文部科学省から学校や図書館に対して、このような要請がなされたことはこれまでに例がない」と異例のことであることも指摘。
「特定分野の図書の充実を求められることは本協会が決議した『図書館の自由に関する宣言』の理念を脅かすものであると懸念する」と懸念を表明した。
日本図書館協会は「図書館の自由に関する宣言は、戦前・戦中に『思想善導』の機関として、国民の知る自由『知る権利』を妨げる役割を果たしたことへの反省のうえに、1954年に制定され、1979年に改訂された。宣言では図書館は『権力の介入または社会的圧力に左右されることなく』、『自らの責任にもとづき』、資料の収集と提供を行う」としている。
事の発端は「特定失踪者家族会」から公立図書館への拉致問題図書の充実について要請があり、内閣官房拉致問題対策本部がこれを受けて北朝鮮人権侵害問題啓発週間(12月10日~16日)に向け、拉致問題に関する図書等の充実、拉致問題に関するテーマ展示を行う等、若い世代に拉致問題への理解促進への協力について、文科省担当課に依頼。文科省が、これを受けて「北朝鮮当局による拉致問題に関する図書等の充実に係る御協力等について」とした事務連絡を行った。
日本図書館協会は「内閣官房からの文書が、そのまま文部科学省からの文書となることは、学校や図書館への指示や命令と受け取られることにもなり、国民の知る自由(知る権利)を保障するうえで、とても危険なことだ」と問題視。「今回の文部科学省の文書は是認することはできません」と断じた。今回のようなことは繰り返されてはならない。(編集担当:森高龍二)