拉致問題、2人の帰国交渉進め膠着脱却をの声も

2022年10月25日 06:23

 岸田文雄総理は23日開かれた全拉致被害者の即時一括帰国を求める国民大集会に出席し「2002年以来、1人の拉致被害者の方の帰国も実現していないことは痛恨の極み。最重要課題である拉致問題は、重大な人権侵害であり、ひとときもゆるがせにすることはできない。再会を果たすことなく旅立たれた御家族の思いを想像するだけで、胸を締め付けられる思い」などあいさつした。

 そのうえで「拉致問題は時間的制約のある人権問題だ」とし「全ての拉致被害者の方の1日も早い帰国を実現すべく、全力で果断に取組んでいく。日朝間の実りある関係を樹立することは、日朝双方の利益に合致する。地域の平和と安定に大きく寄与する」と強調。

 岸田総理は「私自身が、我が国自身が、主体的に動き、トップ同士の関係を構築していくことが極めて重要と考えている。私自身、条件を付けずにいつでも金正恩委員長と直接向き合う決意であると申し上げるゆえんであり、全力で行動していく」と拉致問題への姿勢をアピールした。

 しかし、拉致問題を巡っては、安倍政権当時の2014年~15年ころに政府認定拉致被害者の田中実さん(失踪当時28歳)ら2人について、北朝鮮側が「一時帰国を提案」していたにも関わらず、安倍政権は「拒否」したことを共同通信が複数の交渉関係者から得た情報として今年9月に報じた。

 国際ジャーナリストの高橋浩祐さんは「北朝鮮は以前、拉致被害者の田中実さんと金田龍光さんの生存情報を含む報告書を日本政府に提出した。しかし、政府は他の拉致被害者の死亡情報も含んでいたため、受け取りを拒否した」と投稿。

 そのうえで「今、拉致問題が長年にわたって膠着する中、政府はまずこの2人の帰国なり一時帰国なりを目指して北朝鮮との交渉を再開すべきだ。そうすれば2人からも他の拉致被害者の追加情報が得られる可能性もある。局面打開のための知恵が問われている」と提案している。安倍総理に続き、岸田総理の本気度も問われている。

 なお内閣官房拉致問題対策本部事務局、内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室が今年度に拉致問題に計上した費用は17億5800万円。来年度予算は概算19億Ⅰ500万円を要求。費用に見合った実効性も問われる。19億円の内訳では「情報収集・分析体制の抜本的強化等の必要」としている額が10億3100万円。「拉致問題への理解促進経費など」に4億8100万円、「帰国拉致被害者らへの経済支援」に30億8000万円などを計上している。(編集担当:森高龍二)