助成基金制度が才能ある研究者の可能性を広げる

2011年10月24日 11:00

 不況が続く昨今において、経営の安定や組織の維持を最優先させながらも、次世代を担う開発者や研究者を育成しようと、さまざまな分野で研究助成基金を実施している企業や団体も多い。

 例えば財団法人自然環境研究センターでは、平成5年度より実施している「公益信託ミキモト海洋生態研究助成基金」を本年度も7月に選定され助成を実施。研究テーマは「潮間帯から浅海にわたる海域における生態の保全のあり方に関する調査研究 」等で、応募資格は大学または研究機関の研究者や研究グループ、中・高等学校等の教諭、生物クラブなどとなっている。また、奥村組が平成19年2月に設立した「公益信託 奥村組建設環境技術助成基金」は、建設技術にかかわる環境負荷低減に関する諸研究に対し助成することにより、環境に配慮した建設技術の進歩の実現に寄与し、環境改善および保全が持続可能な社会の実現を目的として実施。応募資格は大学、その他研究機関等に在職し、建設にかかる環境技術に関する研究活動に従事している人で、本年度は4月より平成24年3月31までが公募期間となっている。

 さらに山田養蜂場は、予防医学の研究やミツバチ研究の発展および幅広い視野をもった研究者の支援を目的とする「山田養蜂場 みつばち研究助成基金」で研究公募を行い、2011年度は24の研究テーマに対し助成を行うことを決定している。

 「山田養蜂場 みつばち研究助成基金」は、同社が、「ミツバチと予防医学」に関する優れた研究を支援することを目的に2008年度、創業60周年を機に設立した研究助成。これまでに医学や薬学、生物学、生態学、機械工学などの幅広い分野から、約500テーマの応募があり、108の研究テーマが研究されてきている。また、2009年度はミツバチが突然いなくなる現象である蜂群崩壊症候群(CCD)に関するテーマを公募し、研究を進めるなど、解決すべき重要な課題にも取り組んでいる。

 第4回目となる2011年度は、”予防医学的研究”、”ミツバチに関する基礎研究”、”養蜂技術開発研究”の3分野において、これまでの研究成果を基にミツバチ産品が役立てられる可能性のより高いテーマに絞り込み、さらに45歳以下の若手研究者の枠に加え、年齢制限のない特定分野研究の枠を設けている。2011年5月からの2ヶ月間、国内外から研究テーマを募り、海外応募の増加もあって、昨年を上回る応募が殺到した。

 10月7日には岡山県の本社にて交付式が開催され、同社代表より「これまでに、学会発表、論文発表合わせて60件以上の学術発表が行われ、着々と成果が上がっております。例を挙げますと、ヒト試験におけるローヤルゼリーの冷え症改善作用や、蜂の子による聴力回復作用などで、これらの成果は一般の方々からも多くの反響を頂き、人々の心身の健康に役立つ情報として価値を発揮しています。第4回目の採用者の皆様にも、研究のための研究ではなく、”人の命や健康を支えるための研究”という強い思いで取り組んでいただけることを期待しております。」と採用研究者にかける思いを述べた。また、採用者を代表して丸中良典教授が「私たちの研究成果が、社会への貢献として世の中に発信され、予防医学の見地から、人々のさらなる健康増進が叶うことが、私たち研究者にとって本当の喜びです」と決意を語っている。

 人間はこれまで様々な分野で専門的な研究や開発を行い、驚くべき進化を遂げてきた。しかし、資金不足により各分野の研究者がその能力を発揮できないまま埋もれてしまうことも多々あったと考えられる。研究者及び研究者の卵達の類まれなる明晰な頭脳や発想力から生まれる可能性を無限大に広げるためにも、このような制度は永続的に維持し、大いに利用していくべきではないだろうか。