急速に発展しているEV/HEV車などに代表されるパワーエレクトニクスの分野では近年、さらなるハイパワー化や高効率化、高温動作などが求められており、SiCデバイスの開発と同時に、高温で高効率動作が可能なSiCモジュールの開発が各社で行われている。
そのような状況の中、半導体メーカーのロームはEV/HEV車や産業機器のインバータ駆動向けに、SiCデバイスの温度特性に対応した高温で動作可能なSiCパワーモジュールを開発したことを発表した。
同モジュールは600V/100Aの3相インバータで、同社のSiC‐SBD、SiC‐トレンチMOSFETを各6素子搭載した600V/100Aで、225℃までの駆動を確認。さらにこのモジュールは1200Vクラスまで搭載可能で、これによって従来のSi‐IGBTモジュールと比べ、大幅な損失低減、小型化が可能なだけでなく、これまでのケース型SiCモジュールと比較して大幅なコストダウンが可能となる。今回の発表にて同社は、同製品の3、4年後の実用化を目指すことと、ゲートドライバICを搭載したIPMについても、この技術を用いて、トランスファーモールドDIPタイプで高温動作が可能な600V/50AまでのSiC搭載のIPMを開発予定であることを伝えている。
ロームは、2010年10月に世界で初めて、SiC‐トレンチMOSFETを搭載したモジュール(600V/450A)とSiC‐SBD(ショットキーバリアダイオード)を搭載したダイオードモジュール(600V/450A)のモータへの内蔵および駆動に成功した実績がある。しかし、モジュールについては、従来のトランスファーモールド型では200℃以上の高温に耐えられないため、250℃までの耐熱特性を持つ材料を用いたケース型を使用。同時にケース型に比べて小型化、低コスト化、量産化に有利なトランスファーモールド型の開発を進めてきた。今回、樹脂の物性値とモジュール構造の最適設計によって225℃の耐熱性と小型化を達成したことで、トランスファーモールド型で225℃での大電力動作を世界で初めて可能にしている。