「日本経済はプラス成長に転じた」――ニュースで流れるこの言葉を聞いて、今の生活が豊かになったと実感できる人はどれくらいいるでしょうか。内閣府が昨日発表した10-12月期のGDP速報値は、確かに2四半期ぶりのプラスとなりました。しかし、GDPという巨大な数字は、往々にして私たちの財布の紐の固さや、スーパーでのため息を覆い隠してしまいます。数字が「プラス」なのに、なぜ社会の「空気」は重いままなのか。今回の統計から、景気の本当の姿を探ります。
今回のGDPの最大の特徴は、これまでの「輸出頼み」の成長から、一歩踏み出した「内需の踏ん張り」が試された点にあります。これまでは円安の恩恵を受けた輸出企業が牽引する構図でしたが、今回は世界経済の不透明感から外需がマイナス0.3ポイントと大きくブレーキを踏みました。その穴を、国内の消費と企業の設備投資が辛うじて埋めた形です。マイナス成長に沈んだ前期からのリバウンドという側面もありますが、景気が自律的に力強く回復しているとは言い難い、綱渡りのプラス成長と言えます。
景気の6割を占める個人消費は、前期比でわずか0.1%の増加にとどまりました。これは「持ち直し」とは言い難く、実質賃金の伸び悩みと物価高が、家計の消費意欲を依然として強く抑制している現状を浮き彫りにしています。消費者が「安いもの」を選ぶ、あるいは買い控えを行う傾向は続いており、GDPのプラス幅ほどには、消費の現場に熱気は戻っていないのが現状です。
企業活動に目を向けると、設備投資も0.2%増と、事前の期待ほど伸びませんでした。人手不足を背景としたデジタル化や省力化への投資は下支えとなっているものの、世界的な景気減速懸念やコスト高から、大規模な投資に踏み切れない企業の慎重姿勢が透けて見えます。GDPを押し上げるエンジンとしての役割を、投資が十分に果たせなかったことが、今回の成長率の低迷に繋がっています。
この結果を受けて、政府は「緩やかな回復」との判断を維持するものの、景気対策の必要性を再認識することになるでしょう。また、日銀にとっても、GDPがプラスに転じたことは利上げに向けた一歩ではありますが、その「質の低さ」が懸念材料となります。消費と投資の脆弱さが露呈したことで、追加利上げのタイミングを計る上で、より慎重なデータ確認を求められることになりそうです。
家計にとって、GDPがプラスになったからといって、すぐに生活が楽になるわけではありません。むしろ、0.1%という消費の微増は、私たちが感じている「生活の苦しさ」が数字として裏付けられたことを意味します。GDPの回復が、いつ手取りの増加として私たちの食卓に届くのか。数字上のプラスに一喜一憂するのではなく、その中身が生活にどう波及するかを見極める必要があります。
今回の数字はあくまで1次速報です。今後は、3月に発表される2次速報、そして何より4月の新年度に向けた各企業の賃上げ回答が、GDPを「生活実感を伴う成長」へと変えられるかの試金石となります。数字という「点」ではなく、私たちの暮らしが上向く「線」としての動きに注目が必要です。(編集担当:エコノミックニュース編集部)













