政府は東京電力福島第一原発事故で増え続ける放射性物質による汚染水のALPS処理水海洋放出を「気象・海象条件に支障なければ24日を見込む」(岸田文雄総理)と放出を決定した。総理は原発廃炉にはALPS処理水の海洋放出『せざるを得ず』の心境をこれまでにも色濃くみせていた。
今月中旬にあった「海洋放出に関して22日にも関係閣僚会議を開く」との一部マスコミ報道に「こうした決定をしたことはない」と資源エネルギー庁が18日、異例の報道否定発表を行ったが、これは単に、総理が福島原発を訪ね(20日)、翌日に全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長に海洋放出への理解を求めるうえで支障がないようとったポーズに過ぎなかった。
事前報道通り、22日に関係閣僚会議を開き、海洋放出を決めた。もともと海洋放出は、政府は既定路線として進めてきたが、原発で重大事故を起こせば環境破壊、生態系への影響とともに、その後の処理とランニングコストの膨大さを改めて浮き彫りにしている。
岸田総理は21日の会見で「現在でも、毎日、事故炉に流れ込む100トンの地下水や雨水、過去12年間、この水を処理し、タンクに貯め、今や1000基以上のタンクが林立している。原発廃炉プロセスを更に着実に進めるために、必要なスペースを造る余地がなくなっている。状況打開にはALPS処理水の処分を避けて通ることはできない」と廃炉へ海洋放出をせざるを得ないとアピール。
また「政府としては廃炉の完遂と漁業の生業の継続が実現できるよう、責任を持って安全性確保、風評対策、生業継続支援に政府挙げて努力を続けていかなければならないと考えており、取組みを引き続き進めていきたいと考えている」とした。
特に漁業補償に関して岸田総理は福島を訪ねた20日「風評対策に全力を尽くす。風評が発生した場合の備えとして水産物の販路拡大や一時保管、買い取り支援する基金300億円を経産省で措置している。それでもなお被害が発生した場合には東京電力が適切に賠償を行う仕組みもある。しっかり対応する」と補償も含め準備していると強調していた。(編集担当:森高龍二)