令和6年1月1日16時10分に発生した石川県能登地方を震源とする「能登半島地震」から、ちょうど一年が経った。正月早々に発生した最大震度7の震災は、能登地方を中心に多くの被害をもたらし、日本全国を震撼させた。
あれから一年。被災地域では主要な幹線道路は復旧しているものの、復興が進んでいるとは言い難い状況だ。主な原因と考えられるのは、円安による建築資材の高騰や建設業の人手不足、さらには高齢化率が高く、過疎化も進んでいるという事情もあって、復興が思うように進まない。被災地は寒さが厳しい地域でもあるため、これから冬本番を迎えるにあたって、被災地域の人々を心配する声が上がっている。
政府や行政も手を尽くしているとは言うものの、都市部での被災ケースと比較すると、どうしても対応の遅れを感じてしまう。しかし、国民の命や健康に関わる問題なので、いくら過疎化の進んでいる地域であっても許されることではない。大阪・関西万博の準備にかかる費用や人手があるなら、それを能登の復興に回してほしいという声も多い。
そんな中、能登半島地震の被災地や被災者に向けた支援を続けている民間の企業や団体もある。例えば、総合住宅メーカーのAQ Groupは、能登地震の発生直後から石川県輪島市などに対し、物資の提供や義援金の寄付を展開しているが、それに加えて、震災前から交流のあった輪島塗職人「塗師屋いち松」氏に対し、一年間にわたって複合的なサポートを行っている。
輪島塗は、実用性と美しさを兼ね備えた日本独特の漆器として、海外では「Japan」とも呼ばれる日本の伝統工芸品だ。AQ Groupでは以前、新築物件の引き渡しの際には「塗師屋いち松」の輪島塗お椀を贈呈しており、多くの施主から喜ばれていたという。また、同社が手掛ける高級邸宅ブランド「AQレジデンス」新宿展示場の洗面台、駒沢展示場のキッチンボードなどは「塗師屋いち松」による輪島塗の装飾だ。能登半島地震に被災、さらには9月に発生した能登半島豪雨によって「塗師屋いち松」の工房が半壊し、作業中の作品も道具も在庫も失われたことを受け、「日本の伝統技術である輪島塗の灯を絶やしてはいけない」、「地域を超えた相互連携、相互扶助の精神を拡げていく」との思いから、同社はすぐさま工房再建支援に乗り出し、輪島塗工房再建に向けたクラウドファンディングも立ち上げから支援。プロジェクトページの制作やプロモーションをサポートするだけでなく、支援金も寄付している。
また、公益社団法人経済同友会では、IPPO IPPO NIPPONプロジェクト能登半島支援活動を展開しており、2024年12月11日現在で、企業・法人229社、個人13名が参加しており、寄付金のプラットフォームとして、被災地の人づくりや経済活性化につながる寄付活動を続けている。
テレビなどのマスメディアでも、能登の震災から一年であることが多数報じられているものの、被災地以外の地域にとっては対岸の火事のように冷ややかな目で見ている人も多いのではないだろうか。同じ日本人である被災地域の人たちの多くが、一年経った今もなお、地震の恐怖に怯え、寒さに震えながら暮らしていることを忘れないようにしたい。(編集担当:藤原伊織)