「学び」より「遊び」? 自然の恵みと命の尊さを育む、体験・アートからのアプローチ

2025年10月26日 10:24

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知識も大事だが、自身の五感で感じた自然の豊かさや、創造的な活動を通じて育まれた共感は、子どもたちの心に根強く残り、感性を育むはずだ

 近年、地球規模の環境問題やSDGsへの意識が高まる中、次代を担う子どもたちに「自然環境の大切さ」や「命の尊さ」をどのように伝えるかは、教育現場や家庭における喫緊の課題となっている。しかし、一方的に知識を押し付けるだけでは、子どもたちの心に真の理解を根付かせることは困難だ。子どもたちに自然や命の価値を伝えるには、知識もさることながら、その知識を裏付ける自分自身の体験や経験を通じて、子どもの五感と感情に訴えかけるアプローチが必要だ。

 最も重要なのは、子どもたちが実際に自然に触れる機会を増やすことだろう。

 例えば、公益社団法人日本シェアリングネイチャー協会などが主催する「ネイチャーゲーム」など、全国で開催されている自然環境の中で行われるイベントやアクティビティに積極的に参加すれば、遊びの中で自然を感じることができる。また、ただ単に休日に親子で山や川、近くの公園などに遊びに出かけるだけでも様々な発見があるだろう。木々の色で季節の移ろいを感じたり、虫や草花、土の匂いなどを五感で感じ、自然の多様性を発見する力を養うことができるはずだ。

 また、農業体験や食育体験も、子どもたちに自然と向き合うことの大切さを教えてくれる。

 体験プログラムでは、残念ながら、収穫など農作業の一部しか体験できないものが多いが、それでも普段、スーパーで買っている野菜たちが、どのような姿で実っているか、どのような形をしているかを実際にその目で見ることは、大きな学びと経験になるだろう。何よりも自分で収穫した新鮮な野菜は美味しく感じるはずだ。また、牧場などに出かけてみるだけでも、「命をいただく」ことへの感謝の気持ちが育まれるのではないだろうか。

 そして、そんな体験と並行して、内面的な理解を深めるために「物語」や「アート」を活用したアプローチも大切だ。自然や動物をテーマにした絵本や物語は、子どもたちの共感力を高め、命の誕生や環境問題といったデリケートなテーマを感情移入しながら理解することを助けてくれる。

 例えば、養蜂業大手の山田養蜂場が毎年開催している「ミツバチの一枚画コンクール」などに参加してみるのもおすすめだ。同コンクールは、「自然環境の大切さ」「助け合うことの大切さ」「いのちの大切さ」をテーマに、自然との共生を描く一枚画を国内外から募集し、応募作品 1 点につき 1 本の植樹を行っている。さらに、同社は実際に植樹ができる場も提供している。この11月15日には同社のある岡山県鏡野町で7,400本の木を植える植樹祭を予定している。

 一枚画コンクールには、今年は総数23,697作品が、過去最多となる23の国と地域から届いている。中には、海外から毎年応募している子どももいるという。絵に描かれている環境や植物が国ごとに違うことも興味深く、応募作品や受賞作品を鑑賞するだけでも、ミツバチを取り巻く各国の自然環境に目を向ける良い機会になる。

 そして応募作品の中から、国内外の年代別に大賞 9 点をはじめ、優秀賞・入選・佳作が選出され、10月25日には岡山県の山田養蜂場本社で表彰式が開催された。幼児の部、小学生の部、中高生の部の子どもを対象とした部門だけでなく、一般の部も募集されるので、次回はぜひ、親子で挑戦してみてはいかがだろうか。

 ここに挙げた以外にも様々な分野で今、子どもたちが自然に触れる機会や、体験プログラム、催しなどが増えている。知識も大事だが、自身の五感で感じた自然の豊かさや、創造的な活動を通じて育まれた共感は、子どもたちの心に根強く残り、感性を育むはずだ。機会があれば、ぜひ積極的に参加してみてほしい。(編集担当:藤原伊織)