憲政史上初の女性総理となった高市早苗総理が24日、国会で「所信表明演説」を行った。自由民主党と日本維新の会で連立政権を樹立したとし「今の暮らし、未来への不安を希望に変え、強い経済を作る」と経済対策への強い思いを冒頭に掲げ「日本列島を強く豊かにしていく。世界が直面する課題に向き合い、世界の真ん中で咲き誇る日本外交を取り戻す。絶対にあきらめない決意をもって、国家国民のため、果敢に働いてまいります」とアピールした。
目立ったのが「経済・物価対策」。内閣の「最優先」とした。とりわけ早期実施を期待されるガソリン税暫定税率廃止に関しては「今国会で廃止法案成立を期す。軽油引取税の暫定税率も早期廃止を目指す」と政府公約にした。
実施が年内かどうかは与野党攻防上にある。現況では年内か来年2月か、自民党総裁選の都合で国会審議がずれ込んだことも踏まえて、高市総理(自民総裁)として、野党との約束を果たせるのか、指導力、党内統率力が早速問われる場面になっている。
医療機関や介護施設の経営環境の厳しさを踏まえ、「診療報酬・介護報酬について報酬改定時期を待たず、経営改善及び従業者の処遇改善につながる補助金を措置し、効果を前倒しする」とした。
地方経済にも目を向けた。「物価高の影響を受ける生活者や賃上げ税制を活用できない中小企業・小規模事業者、農林水産業などを支援する推奨メニューを設け、地域の実状に合った的確な支援を速やかに届ける」とし重点支援地方交付金を拡充する。
103万円の壁について「今年の年末調整で160万円まで対応するが、基礎控除を物価に連動した形で更に引き上げる税制措置について真摯に議論を進める」と語った。「税・社会保険料負担で苦しむ中・低所得者の負担を軽減し、所得に応じて手取りが増えるようにしなければならない」とし「早期に給付付き税額控除の制度設計に着手する」と公約した。
このほか「成長戦略の肝は危機管理投資」との視点から、AI・半導体、造船、量子、バイオ、航空・宇宙、サイバーセキュリティ等の戦略分野に対し「大胆な投資促進、国際展開支援、人材育成、スタートアップ振興、研究開発、産学連携、国際標準化といった多角的な観点からの総合支援策を講ずることで、官民の積極投資を引き出す」と打ち上げた。
「世界で最もAIを開発・活用しやすい国を目指して、データ連携等を通じ、AIをはじめとする新しいデジタル技術の研究開発及び産業化を加速させる。コンテンツ産業を含めたデジタル関連産業の海外展開を支援する」。
物価高対策・生活支援・経済対策では「希望・期待」を国民に提供する内容だった。これが「絵に描いた餅」にならないよう行政手腕を期待したい。
一方で外交・安全保障・防衛、表現の自由など憲法3原則にかかる政策分野には慎重な姿勢、野党の異論に耳を傾ける姿勢を期待したい。総理判断が国家を誤った方向に導くことがあってはならない。
高市総理は所信表明冒頭で「政権の基本方針と矛盾しない限り、各党からの政策提案をお受けし、柔軟に真摯に議論してまいります」と議論の前提を、基本方針に矛盾しない提案に限ったと受け取れる発言を行った。
国家・国民のための総理であるからこそ、政権の基本方針と矛盾する意見にこそ、耳を傾け、修正すべきは修正していく姿勢が求められる。その点を常に念頭に置いて対応をお願いしたい。
防衛に限れば、高市総理は「我が国として主体的に防衛力の抜本的強化を進めることが必要」と強調し「国家安全保障戦略に定める『対GDP比2%水準』について、補正予算と合わせ、今年度中に前倒して措置を講ずる」と大幅増を事実上宣言した。
中国を念頭に危機感を強めての強化なのだろうが、必要以上に周辺国に緊張感を与えることにつながる危険度が高い。加えて「来年中に『戦略3文書』を改定することを目指すと語った。
日本維新の会との連立政権合意では戦略三文書を前倒しで改定する、長射程ミサイルを搭載し長距離・長期間移動や潜航可能とする次世代動力活用VLS搭載潜水艦の保有に係る政策推進、令和8年通常国会で「防衛装備移転三原則運用指針」五類型撤廃、防衛産業に係る国営工廠及び国有施設民間操業に関する施策を推進するとしている。
日本の防衛の在り方、憲法9条の下での「防衛に必要な最小限度の実力行使の装備」という概念との整合性がとれるのか。「いけいけドンドン」の高市政権が「熟議の国会」を継続し、所信表明演説に織り込んだ「日中首脳同士で率直に対話を重ね、『戦略的互恵関係』を包括的に推進していく」との姿勢にこそ、重心を置いて「高市外交」を進めていかれることを期待したい。(編集担当:森高龍二)













