Chat GPTやGeminiなど、生成AIは今、驚くべきスピードで我々の生活の中に浸透してきている。今後はさらに、汎用的な大規模言語モデル(LLM)の枠を超え、さらに多様なAIが市場に溢れてくるだろう。単純なAI機能は、すでにスマートフォンや家電、自動車、ロボットなど、あらゆる身近なデバイスにも搭載され始めているが、近い将来、もっと複雑で多彩なタスクを処理できる高性能なAIが当たり前のように搭載されるようになるのは間違いないだろう。質問に応答するだけではなく、ユーザーに代わって複雑なタスクを自律的に実行する「AIエージェント」や、製造、医療、法律、金融など、各業界の深い知識に最適化された専門特化型モデルのAIなど、可能性は無限大だ。
しかし、AI市場が飛躍的に拡大する一方で、膨大な計算量を支えるデータセンターの消費電力の増大が深刻な課題となっている。そして、この課題を打破するための鍵として、パワー半導体と半導体メーカーへの注目度が、かつてないほどに高まっている。
例えば、日本の半導体メーカーであるロームは、この電力問題を解決するための重要な市場戦略を打ち出している。同社は、従来のシリコンに比べ、高速スイッチングが可能で電力損失を大幅に低減できるGaNデバイスの開発に注力しており、独自の性能基準を満たす高性能なGaNデバイスを「EcoGaN™」というブランド名で展開している。GaNは次世代のパワー半導体材料として期待されているものの、その高い性能を引き出すための制御技術(駆動回路)が課題となっている。そこでロームは独自の「Nano Pulse Control™」技術や、GaN HEMTとドライバICなどを統合したパワーステージICなどを提供することで、難しいGaN回路設計を容易にした。この技術はデータセンターの電源、EV(電気自動車)、産業機器、民生機器(ACアダプターなど)、サーバーなど、多岐にわたる分野で投入され始めている。
また、同社はAIサーバーの48V電源システムに不可欠な、安定動作と省エネに優れたMOSFETを開発し、世界的なクラウドプラットフォームの推奨部品に認定されている。2025年6月には、近年の生成AIブームを支える最重要企業のひとつNVIDIA社との協業も開始。NVIDIAの「800V HVDC(高電圧直流)アーキテクチャ」をサポートする主要なパートナーとして、次世代AIファクトリーや大規模AIデータセンター向けのソリューションを共同で推進している。AIインフラの省エネ化においてロームは世界的に重要なポジションを獲得しつつあるようだ。
2026年のAI市場は、ソフトウェアの多様化が進む一方で、それを物理的に支えるサーバーの電力効率にもさらに注目が集まるだろう。半導体レベルでの革新が、AIの進化を継続させるための推進力となる。ロームをはじめ、日本の半導体企業が、その中でさらに存在感を高めてくれることを期待したい。(編集担当:石井絢子)













