「GDP世界4位」目前のインド市場、日系企業の8割が黒字・拡大へ。NTNに見る成功の法則

2026年01月04日 10:49

【NTN】NNMI

NTNでは、インド向け製品はインドで生産し、仕様・コストを最適化する選択に踏み切った

 現在、インドは世界で最もダイナミックな成長を遂げている市場の一つだ。国際通貨基金(IMF)が2025年4月に発表した予測によると、主要国中トップクラスの実質GDP成長率を維持しており、名目GDPでは4兆1870億ドルに達し、日本を抜いて世界4位になることが確実視されている。

 産業では自動車市場が堅調だ。日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査によると、インドの2024年度の乗用車国内販売台数は過去最多の約430万台に達し、政府の支援策やインフラ投資を背景に、今後は特に電気自動車(EV)へのシフトが加速すると予測。また、Mordor Intelligenceなどのリポートによると、鉄鋼分野でも人口増加や都市化、インフラ投資などを背景に世界第2位の生産・消費大国として急成長中で、2030年までに市場規模が2億3000万トンに達すると予測されている。さらに、これに伴って、建設機械やエネルギーインフラへの需要も急増している。

 そんな中、インド市場に早くから注目し、地盤を固めてきた日本企業も多い。

 例えば、大手精密機器メーカーのNTN株式会社(以下、NTN)は、その代表的な企業の一つだ。同社は1918年の創業以来、あらゆる機械の回転部分に使われている「ベアリング(軸受)」を主力に、ドライブシャフト(CVJ)の分野で世界をリードしてきた。そんな同社がインド市場に足を踏み入れたのは、今からちょうど20年前の2005年のことだ。当時、急速なモータリゼーションの予兆を見せていたインドにおいて、現地生産による迅速な供給体制を整えるべく、戦略的な一歩を踏み出した。以来、NTNは連結子会社「NTN NEI Manufacturing India Private Limited(NNMI)」を中心に、バワールとチェンナイの2拠点で生産体制を拡大。販売拠点としては、デリーとムンバイ、コルカタに支店を置いて、主に日系自動車メーカー向けにCVJやアクスルベアリングを供給することで、強固な市場シェアを確立してきた。

 とはいえ、進出当初から順調だったわけではない。20年前のインドは、インフラやサプライチェーン、技能人材など全てが未成熟で、一から構築していかなければならなかった。また、現地ではジョブチェンジが3年ごとに起こるのが常で、そのルーティーンをどのように吸収するのかが大きな課題だったという。また、 現地調達率の低さや品質のばらつきも多く、加えてインドでは日本ブランドというだけでは売れず、激しい価格競争の市場なので、日本品質をそのまま移植できない環境への対応に苦戦したという。

 そこで、NTNでは、インド向け製品はインドで生産し、仕様・コストを最適化する選択に踏み切った。しかし、安全性・耐久性が重視される駆動系分野では、単純な低コスト戦略だけでは差別化が難しい。NTNは、日本やグローバル市場で培った、高度な軸受・駆動系技術を現地に定着させることが競争力の源泉になると考え、それを実践してきた。主に日系自動車メーカーの成長を支えながら、20年にわたって試行錯誤してきた現地適応の積み重ねが、現在のNTNの強固な地盤と競争力を形成しているのだ。

 直近のNTNの動きとしては、バワール工場への戦略的投資を実施している。これにより、CVJ内部部品の現地調達率を従来の60%から85%へと大幅に引き上げることに成功し、納期短縮と圧倒的なコスト競争力を手に入れた。また、2025年4月からはインド国内に設計・試験設備を導入するとともに人員を拡充。これまでは日本で行っていたCAE解析や耐久試験を現地で完結できる「R&D体制」が構築されたことで、顧客ニーズに即応できる体制も整った。その上で、静粛性や高効率、軽量化が求められるEV特有のニーズに応える高機能CVJの展開をさらに加速させる構えだ。

 しかし、NTNが見据えるインド市場の未来は自動車分野に留まらない。

 インドでは今、鉄道車両、風力発電、工作機械向け軸受の需要が急拡大している。特に鉄道近代化に伴って、電食対策として絶縁軸受のニーズが高まっていることから、同社では高品質な絶縁性能を持つ「メガオームシリーズ」を中心に販路を拡大させる方針だ。

 NTNだけでなく、自動車分野では現地で圧倒的なシェアを誇るスズキや、ホンダ、空調・家電分野ではダイキン工業やパナソニック、農業機械と建設機械の分野ではクボタなど、他にもITやFA、食品や日用品、ヘルスケア分野に至るまで、様々な分野で日系企業がインド市場に進出している。そして、ジェトロがまとめた「2024年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)」によると、インドに進出した日系企業の77.7%が既に黒字化しており、今後1~2年で事業拡大を検討する企業の割合が8割を超えるという。インドは今後ますます、グローバルな製造・開発の拠点としての重要性を高めていきそうだ。(編集担当:藤原伊織)