今期は3月11日の東日本大震災により、業績や今後の見通しが不安定となった企業も多く、投資家の不安を取り除く意味でも、各企業に対して十分な情報開示が求められている。各企業は機関投資家のみならず個人投資家に向けても決算説明会を実施するなど、積極的なIR活動を行っているようだ。そんな中、大震災に端を発した電力不足により注目を集めた飲料業界のダイドードリンコも8月30日に個人株主・個人投資家を対象とした第2四半期決算説明会を開催している。
当日、冒頭で同社社長である高松氏は「今回の大震災で一部では自販機不要論が叫ばれた時期もありましたが、震災時において、自販機は物資の供給面で大いに活躍し、ライフラインの復旧過程において、被災地の方々に、大変役立ったお話もいただいており、まさに自販機は生活において重要な役割を果たしていることを再認識した次第であります。なお、冷却機の一時停止を実施し、ピーク時間帯における最大使用電力25%の削減に取り組んでおり、10年前と比べると約7割も節電できております」と同社が想定した参加者の関心事に触れ、その後は、第2四半期決算の概要、通期業績予想などの数値説明にとどまらず、同社の基本的な考え方、そして、大変厳しい経済環境下での取るべき道筋等について説明した。
同社は毎回、決算説明会開始前に集まった個人株主、個人投資家に用紙を配り、そこに質問を記載してもらい回収。後半の質問に答えるコーナーで、その回収した質問に答えていくという形式を取っている。これは限られた時間内でより多くの質問に答えていきたいという同社の考えであり、「多くの人の前で手を上げて質問するのは、なかなか難しい」といった声にも対応したもののようだ。今回は「災害自販機について詳しく聞きたい。実際に震災の際に役に立ったのか?」「一時、自販機の不要論があったが、自販機の節電対策はどうなっているのか?」「本当に節電はできているのか?」といった内容の質問が多く寄せられていた。
同社はこういった質問を予測し、震災で注目を浴びた「災害自販機」を実際に登場させ、停電時の自販機の状況などを会場の照明を落とし実演。停電になった場合、専用キーによる簡単な操作で、内臓の非常用バッテリーに切り替えることで機内の商品を無償で取り出せることを説明した。また、取り出した飲料を司会者が飲み冷えていることを確認、2時間前から冷却機能を停止した状態であったことを担当者が告げ、保冷機能の持続性も紹介した。さらに、自販機の庫内を開放、7月から9月に全自販機で実施されたピークカット処置により、冷却機能が停止しても真空断熱材などにより保冷効果が続くことを説明。この自販機を用いての説明は「分かりやすい」と参加した投資家たちは声を上げていた。
長引く不況による景気回復の不透明感に、本年度は大震災も加わり、各企業、これまで以上に経営手腕が問われる時期となっている。これら企業の経営状況を把握できる決算説明会の存在は、投資家にとって重要な判断要素の1つのとなっている。