本人確認は誰が握るのか 日立が狙う次世代ID基盤

2026年04月22日 09:40

画・ネット通販変革期、半年に1回以上83.5%。

日立とパナが次世代デジタル身分証 生体認証でパスワード不要に

今回のニュースのポイント

日立とパナソニックがデジタル身分証で協業拡大:日立製作所の生体認証技術「PBI」とパナソニック コネクトの高精度な顔認証技術を融合し、端末やパスワードに依存しない新しいデジタル身分証の社会実装を目指します。

「自己主権型アイデンティティ」の実現:個人が自らの身元や属性情報を安全に管理し、必要な場面で必要最小限の情報だけを提示できる仕組みを構築します。

秘密鍵を「端末に保存しない」新構造:従来のデジタルウォレットの弱点だった端末紛失時のリスクを、認証のたびに生体情報から鍵を生成・即時破棄する技術で克服します。

行政から金融、AI時代の意思証明までカバー:行政手続きや避難所での本人確認に加え、生成AIによるなりすましを防ぐ「本人の意思証明」としての活用も視野に入れています。

 私たちが日常的に行っている「ログイン」や「本人確認」のあり方が、根底から変わろうとしています。日立製作所とパナソニック コネクトが発表したデジタル身分証に関する協業拡大は、単なる利便性の向上にとどまらず、デジタル社会の「入り口」における主導権を巡る動きとして新たな局面を示唆しています。

 今回の構想の核となるのは、日立の公開型生体認証基盤「PBI」と、パナソニック コネクトの高精度な顔認証技術の融合です。最大の特徴は、従来のデジタル身分証が抱えていた「セキュリティのジレンマ」の解消にあります。一般的なデジタルウォレットは、本人を証明するための「秘密鍵」をスマートフォンなどの端末内に保存するため、端末の紛失や盗難による不正利用のリスクが常に付きまとっていました。

 対して両社が目指す仕組みは、認証のたびに本人の生体情報から秘密鍵を生成し、処理が完了すれば鍵自体は即座に破棄します。秘密鍵を端末内に保存せず、生体情報も復元できない形に変換して管理することで、物理的な紛失やパスワード管理の負担から解放される構造です。複雑なパスワードや復元コードの管理も不要になると説明しています。

 この技術が目指す先は、個人が自身の情報を主体的に管理する「自己主権型アイデンティティ」の確立です。行政手続きやローンの審査、イベントの入退場、さらには災害時の避難所での本人確認まで、一つの生体認証(IDレイヤー)の上で完結する世界が描かれています。両社は2026年度中に自治体などと実証・ユースケース検証を行い、2027年度以降の本格的なサービス展開を見込んでいます。

 特に注目すべきは、AIエージェントの進化に対応した「意思証明」としての機能です。生成AIによるディープフェイクやなりすましに対し、生体認証による電子署名を組み合わせることで、「その行為が本当に本人の意思によるものか」を技術的に担保しようとしています。これはもはや単なるログイン手段ではなく、AI時代の社会活動における「最終的な意思決定者」を証明するインフラの構築といえます。

 電力や交通といった社会インフラ領域でのこれまでの展開を踏まえると、今回のID基盤の強化は、そこに「人間」という最大のピースを繋ぎ合わせるものといえます。日立とパナソニック コネクトの取り組みは、行政から産業までを横断する次世代の社会信頼基盤の主導権を狙う動きとも見ることができるでしょう。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)