今回のニュースのポイント
・12回目の整備・植樹を実施:2026年3月28日、社員ら9名が住吉川付近で下草刈りやイロハカエデなどの植樹を行いました。
・5年で約4,500㎡をケア:2021年から継続的に参画し、これまでに植えた木々が4mを超えるなど着実な成果を上げています。
・酒造りの「生産基盤」を守る:酒造りに不可欠な「良質な水」と「六甲颪(おろし)」を育む六甲山の自然環境を、次世代へ繋ぎます。
・防災と事業継続の両立:崩れやすい花崗岩質の山を整備することで、土砂災害を防ぎ、地域の安全と安定した酒造り(インフラ投資)を両立させています。
企業による森林整備は、単なるボランティア活動としての枠を超え、事業そのものを支える資源を維持するという側面もあります。白鶴酒造(兵庫県)[和大1.1]が継続している六甲山での整備活動「森の世話人」は、まさにその典型例といえるでしょう。
「森の世話人」とは、国土交通省 近畿地方整備局 六甲砂防事務所が主宰する六甲山の保全活動です。市街地に近い六甲山地の斜面を樹林帯として守り育て、防災機能の強化と自然豊かな生活環境を確保することを目的としています。
白鶴酒造は2026年3月28日、六甲山で第12回目となる「森の世話人」活動を実施しました。2021年12月の参画以来、住吉川上流域の約4,500㎡という広大な指定区域において、年に数回の下草刈りや植樹を積み重ねてきました。今回はこれまで植樹が行われていなかったエリアに、イロハカエデなど6本の苗木を植えました。また、植樹した木を動物の食害や強風から守るための樹木保護材についても、新たに生分解性プラスチック製の資材を導入するなど、保全手法のアップデートも図られています。
なぜ、酒造会社がこの取り組みに賛同するのか。その背景には、六甲山が灘五郷の日本酒造りに与えてきた、代替不可能な恵みがあります。六甲山は、酒造りに欠かせない良質な水を育み、寒造りに適した冷気「六甲颪」を生み出す存在でもあります。急峻な地形と花崗岩質の地質を持つ六甲山は、適切な樹林帯を維持することで、表土を守り、雨水を地下へと蓄えることができます。つまり、六甲山の森を健やかに保つことは、清酒生産と密接に関係しているといえます。
構造的に見れば、こうした取り組みは「六甲山系グリーンベルト整備事業」への参加を通じて、「地域インフラとしての森」を企業が分担して担うモデルといえます。六甲山は市街地に近く、土砂災害リスクが高いという特性を持っています。根の強い落葉広葉樹を育て、表土の保全と雨水涵養を促す活動は、自社の生産基盤を守ると同時に、地域社会の防災インフラを強化する役割も果たしています。
この「資源を守る経営」へのシフトは、各地で見られる傾向です。たとえば霧島酒造(宮崎県)は、焼酎づくりに不可欠な地下水を守るため、霧島山系において森林保全活動を長期的に展開しています。植樹や下草刈りといった整備を継続することで、水源涵養機能の維持を図り、原料の安定供給を確保する取り組みです。こうした活動は単なる環境配慮にとどまらず、「水」という生産の根幹を守るための戦略的投資として位置づけられています。酒造業において水質と水量は品質を左右する決定的な要素であり、森林の維持はその前提条件を支えるものです。
白鶴酒造と霧島酒造の事例は、自然資源の保全がそのまま事業継続性に直結する産業構造を示しています。今後は、活動の長期化とともに、他業種への波及がさらに進む可能性があります。森を単なる景観としてではなく、企業活動と地域経済を支える「生産インフラ」として捉え直す動きは、ますます重要な活動となっていくでしょう。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













