昨年のワールドカップ、今年のアジアカップの日本男子代表チームの飛躍的な活躍により、サッカー人気は子供から大人まで日本列島を揺るがすほどの盛り上がりを見せた。企業がスポンサーとなった他のスポーツクラブが相次いで休部や廃部に追い込まれ、活動資金不足が挙げられるなか、サッカー人気はここ数年安定しており、国際試合はもちろん、Jリーグの観客動員数も世界のクラブ全体を見ても5本の指に入るほどの盛況ぶりで、ここ数年は右肩上がりで伸びている。また、今回のなでしこジャパンのワールドカップ優勝という快挙も加味し、国内のサッカー人気は男子だけでなく、女子のメジャースポーツとしても大きく飛躍しようとしている。
現在、日本男子サッカーリーグの構成はプロサッカーリーグのJリーグ(J1・J2)、アマチュアサッカーリーグの最高峰であるJFL、各地域リーグ、各都道府県リーグの順となっている。Jリーグは発足当時のブームが去った90年代後半は横浜フリューゲルスが消滅するなど、一時は経営難に陥るチームが相次いだが、1999年のJ2誕生により地域密着が加速。その影響を受けてJ1でも基本理念であった地域密着に原点回帰し、それが安定成長につながっているという。
しかし、下部リーグの男子チームも経営が安定しているかというとそうではない。不況によりスポンサー企業を探すことは難しく、運営資金不足による存続の危機に見舞われているチームも少なくはない。下部リーグである地域リーグのチームなどはなおさらスポンサー探しに翻弄され、台所事情は厳しいようだ。
これまで各チームは経営を維持すべく様々な方法を展開している。例えば地域リーグの北信越フットボールリーグ2部に所属するアルティスタ東御は、ダイドードリンコの協力を得て「アルティスタ東御応援自動販売機」を発案。この自動販売機の売上の一部が同チームの運営費をして寄付されるという仕組みになっているという。元々ダイドードリンコは自動販売機の売上が90%を占める企業だけあり、地域密着型の経営戦略を取っている。地域活性化のサポートをしたいという企業方針で、自販機を活用したサポートを多方面で展開しているようだ。
また、JFLのカマタマーレ讃岐は、「プロジェクトさぬきうどん」を実施している、これは一口1000円で個人と法人からの出資を募り、カマタマーレ讃岐の胸部に「さぬきうどん」のロゴを掲出している。このプロジェクトで得た資金はチーム強化費に使用。ファンドの様な配当はないが、ホームページに名前を掲載したり、法人であれば出資金に応じてさらなる特典を付けている。
今回、盛り上がりを見せた日本女子サッカーに関しては、これまでほとんど注目されず、現在、リーグは最高峰のなでしこリーグ、チャレンジリーグEAST、チャレンジリーグWESTに分かれているが、上位のなでしこリーグですら運営資金に苦難している状態であった。7月31日のINAC神戸対岡山湯郷Belleの試合でなでしこリーグ史上はじめての2万人を超える動員数を記録。今後、この注目度が持続すれば、女子の下部チームに対してもスポンサー契約が増え、さらに入場料で運営資金を補えると関係者は期待しているようだ。
一流選手が世界を舞台に活躍することで華やかに見えるスポーツ業界も、裾野は小さな支援で成り立っていることを見据え、また、不況の中でも地域活性化の一環としてバックアップする企業、サポーターの存在が大きいということも知っておくべきだろう。