なぜ日本人は現金を手放さないのか 世界が驚く“円の国”の習慣

2026年05月30日 06:35

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キャッシュレス決済の普及により、国内の決済手段は多様化が進んでいる。一方で、日本では現金への信頼も根強く、現金とキャッシュレスが共存する独自の決済文化が続いている。

今回のニュースのポイント

経済産業省などのまとめによると、2024年の国内キャッシュレス決済比率は前年比で上昇し42.8%(決済額141兆円)に達したことが分かった。政府が目標として掲げていた「2025年までに40%程度」を前倒しで達成し、足元では50%台に達したとする推計も公表されている。しかし、近隣国の韓国(99.0%)や中国(83.5%)といった主要国と比較すると、我が国における現金利用の割合は依然として高い水準を維持している。この背景には、偽札の流通が極めて少ないという通貨そのものへの高い信頼や金融インフラの利便性に加え、大規模災害時の停電リスクへの警戒感、さらにはスマホ決済等の裏側を支える銀行間決済システムの堅牢性など、日本独自の社会構造が関係している可能性が指摘されている。

本文
 国内におけるキャッシュレス決済は、各種スマートフォン決済の普及やポイント還元施策などを背景に、近年着実な広がりをみせています。2024年時点の日本のキャッシュレス決済比率は42.8%を記録し、決済金額の規模は141兆円にまで拡大しました。これにより、当初政府が設定していた目標値は既にクリアされ、国内の決済環境の利便性は向上しているとうかがえます。しかし、国際的な視点で比較を行うと、イギリスの64.2%、中国の83.5%、さらには9割を超える韓国などの主要国に対し、日本では依然として現金利用の割合が高い水準にあります。

 日本において現金利用が根強く支持される背景には、第一に通貨および金融インフラに対する高い信用力があります。我が国の紙幣や硬貨は高度な偽造防止技術によって製造されており、偽札が市場に流通するリスクが他国に比べて極めて低いことが指摘されています。さらに、全国各地の利便性の高い場所に現金自動預払機(ATM)網が細かく巡らされており、現金の調達や利用において物理的な不便を感じにくい社会環境が確立されています。また、盗難リスクの低さや、紛失した物品の回収率の高さに代表される安定した治安環境も、多額の現金を持ち歩くことへの心理的ハードルを下げ、現金文化を実質的に支える要因となっているとみられます。

 さらに、地理的な要因である「災害リスク」への対応も、確実な決済手段としての現金を再評価させる契機となっています。クレジットカードや二次元コード決済をはじめとするキャッシュレス手段は、そのすべてが安定した電力供給と通信ネットワークの稼働を前提として成り立っています。大地震や台風などの自然災害に伴い大規模な停電や通信障害が発生した場合、POSレジや決済端末が稼働を停止し、電子決済が利用できなくなるケースが想定されます。過去の災害局面においても、決済端末の機能停止により現金支払いへの切り替えを余儀なくされた小売店舗が相次いだ経緯があり、社会的な非常時における生活防衛手段として、一定の現金需要が維持される背景となっています。

 こうしたキャッシュレス化の進展が進むなかでも、国内の金融決済システムの核心を担う銀行の役割が変化しているわけではありません。日本銀行が発表した2025年4月の決済統計によると、日銀当座預金決済の1日平均取扱額は前年同月比3.6%増の251.5兆円を記録しています。このうち、日本の基幹決済インフラである「全銀システム」を経由する資金は1日平均19.2兆円に上り、給与振込や公共料金の引き落とし、各種リテール決済などが載る小口内為取引の1件当たり金額は約5.3万円となっています。

 ユーザーが手元のスマートフォン画面で行うあらゆるキャッシュレス決済も、その清算やチャージの最終的な着地点は、これら日銀ネットや全銀システムを流れる銀行口座間の資金振替です。日本の現金文化は、単なる保守的な習慣ではなく、高度に整備された金融インフラへの信頼や、災害大国としてのリスク管理意識とも関連している可能性があります。今後の決済を巡る議論では、利便性だけでなく、災害対応や決済インフラの強靱性も重要な論点となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)