平均所得575万円でも中央値451万円 数字が語る日本の所得構造

2026年07月15日 17:46

画・2017年、日本の人口。日本人減少、外国人大幅増加。

平均所得は増加しても、家計の実感は一様ではありません。平均値と中央値の違いは、日本の所得構造を読み解く重要な手掛かりとなります。(写真:イメージ)

今回のニュースのポイント

厚生労働省が公表した最新の「国民生活基礎調査」によると、2024年の全世帯における1世帯当たり平均所得金額は575万2千円となりました。しかし、所得を低い順に並べた際のちょうど中央に位置する「中央値」は451万円にとどまっており、両者の間には124万2千円の乖離が存在します。さらに、平均所得金額を下回る世帯の割合は全体の6割を超えていることも明らかになりました。マクロ統計の「平均値」だけでは見えにくい日本の所得分布と家計の実像を、具体的なデータからひも解きます。

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 平均所得、575万2千円。厚生労働省の最新の統計に躍り出たこの数字を見て、「自分の実感より高い」と感じる人もいるかもしれません。前年比7.3%増という大幅な増加を記録した全世帯の平均所得ですが、実感を伴いにくい背景には、統計の「平均値」が持つ特有の性質が関係しています。平均値は、一部の高所得層の数字によって全体の水準が引き上げられやすいため、必ずしも一般的な世帯の暮らしぶりを反映するわけではありません。名目上の数字がどれほど増加しても、その数字が社会の「真ん中」を示しているとは限らないのです。

 では、所得分布の「真ん中」を示す指標は何なのでしょうか。それこそが「中央値」です。中央値とは、所得が低い世帯から高い世帯までを順番に一列に並べたときに、ちょうど中央で2等分する境界の値を指します。今回の調査における全世帯の所得中央値は451万円でした。平均所得である575万2千円と比べると、じつに124万2千円もの開きがあります。この差が、平均所得と多くの世帯の所得感覚が一致しにくい一因と考えられます。

 この構造をさらに裏付けるのが、所得の分布状況です。所得金額階級別に世帯数の割合をみると、「200万~300万円未満」が13.5%で最も多く、「300万~400万円未満」が13.0%、「100万~200万円未満」が12.2%と続いています。400万円未満の層に全体の約4割近くが位置しているのが現実です。所得分布が高所得側へ広がっているため、平均所得金額(575万2千円)を下回る世帯の割合は、全体の61.5%を占めています。このように平均値を下回る世帯が半数を超えることは、所得分布の特性として自然に起こり得るものであり、平均値だけでは社会全体の状況を網羅しきれない背景となっています。

 こうした統計の特性を踏まえると、国の財政や税制、社会保障などの政策を検討する際には、平均値だけでなく、中央値や所得分布も併せて見る重要性が浮かび上がります。たとえば、平均値だけを前提に支援制度を検討すれば、中央値付近に位置する世帯の実態を十分に捉えられない可能性があります。中間層の厚みや購買力を正確に把握し、実効性のある再分配政策を行うためには、社会のボリュームゾーンがどこにあるのかを中央値や分布から捉える視点が必要となります。

 「平均」という一つの物差しだけでマクロ経済を捉えようとすることには、限界があります。世帯類型別にみると、児童のいる世帯の平均所得は857万3千円と高い一方、生活意識調査では61.5%が「苦しい」と回答しています。所得額だけでは、世帯人数や子育て費用を含む生活負担の全体像を捉えにくいことがうかがえます。名目所得の伸びという「平均」の側面に目を奪われ、所得分布や中央値という別の側面を見落とせば、真の景気動向や家計への負担感を見誤ることに繋がりかねません。

 最新の国民生活基礎調査は、平均所得575万2千円という一見堅調な数字の裏に、中央値451万円という所得分布の実態があることを明示しました。統計の数字は、その算出方法や読み解き方によって見え方を変えます。政策やビジネス、あるいは市場の動向を見極める上でも、単一の平均値に惑わされることなく、中央値や度数分布が語る「所得分布の実像」を多角的に観察していく姿勢が、これまで以上に重要となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)