平均所得は7.3%増でも苦しい世帯は半数超 国民生活調査が映した家計の実像

2026年07月16日 07:14

画:取:事前シミュレーションで問題なし 育休明けの職場復帰

行き交う人々。平均所得は前年から増加した一方、「生活が苦しい」と感じる世帯は依然として半数を超えており、家計の実感とのギャップが浮き彫りとなっている。(画像はイメージ)

今回のニュースのポイント

厚生労働省が公表した最新の「国民生活基礎調査」によると、2024年の1世帯当たり平均所得金額は575万2千円となり、前年の536万円から7.3%増加しました。一方で、生活意識調査において「生活が苦しい」と答えた世帯の割合は、前年の58.9%から55.4%へ低下したものの、依然として半数を超えています。平均所得は増加し、生活意識も前年より改善したものの、依然として半数を超える世帯が生活に苦しさを感じている点は、日本の家計が抱える課題を映し出しています。

本文
 日本の世帯所得は前年から大幅に増加しました。厚生労働省が実施した2025年国民生活基礎調査によると、全世帯の1世帯当たり平均所得金額は575万2千円に達しました。これは前年の536万円から7.3%という大幅な増加となっています。世帯類型別でも平均所得は前年を上回り、名目上の所得額は各区分で増加しました。具体的には、「高齢者世帯」が336万1千円(前年比6.8%増)、「高齢者世帯以外の世帯」が700万7千円(同5.1%増)、「児童のいる世帯」が857万3千円(同4.5%増)となっており、各世帯類型における名目上の所得水準の上昇が確認できます。

 しかし、こうした所得データの動きに対し、人々の生活意識の推移をみると複雑な実態が浮かび上がります。生活意識調査において、自らの暮らしを「苦しい(大変苦しい、あるいはやや苦しい)」と答えた世帯の割合は、全世帯で55.4%となりました。これは前年(2024年調査)の58.9%からは3.5ポイント低下して改善がみられるものの、数年前の調査(2022年調査:51.3%)と比較すると高い水準にとどまっています。各種世帯別にみると、ひとり親ファミリーなどの「母子世帯」では82.1%、「児童のいる世帯」でも61.5%が依然として「生活が苦しい」と回答しており、半数を超える世帯が厳しい水準にあることが示されています。

 名目所得が増えた一方で生活の苦しさがなお半数を超える背景の一つとして、食料品や光熱費など生活に身近な支出負担の重さが考えられます。同調査において世帯主の年齢階級別に貯蓄の増減状況を調べたデータでは、前年と比べて「貯蓄が減った」と回答した世帯が総数で36.9%にのぼっています。さらに、その貯蓄が減った世帯の減額理由としては、すべての年齢階級において「日常の生活費への支出」がもっとも多く、全体で80.1%を占めています。名目上の所得額が増加したとしても、日々の生活費の負担が家計に重くのしかかっている実態が、こうしたデータからもうかがえます。

 統計上の「平均所得」という指標が、個々の世帯の生活実感と乖離しやすいという構造的な要因もあります。所得の分布状況をみると、所得が低い世帯から順番に並べた中央の境界値である「中央値」は451万円となっています。これに対し、一部の高所得層によって数値が引き上げられやすい「平均所得金額(575万2千円)」以下の水準にとどまる世帯の割合は、全体の61.5%に達しています。平均所得は多くの世帯の実態より高く見えやすく、平均値だけでは家計全体の状況を捉えにくいことが分かります。なお、所得は2024年の年間所得、生活意識は2025年7月時点の回答であり、調査時点が異なる点には留意が必要です。

 日本経済が名目上の賃上げや所得の増加傾向を迎えるなかで、今回の調査結果は、名目上の金額が増えることだけでは必ずしも生活の安心感やゆとりには直結しない現実を冷静に伝えています。今後は名目上の数字だけにとどまらず、家計が実質的な豊かさを感じられる環境や、生活に身近な支出負担のバランスをいかに整えていくかが、経済政策における重要な論点と言えそうです。

 平均所得は前年から大幅に増え、生活苦の割合も前年より改善したものの、依然として半数を超える世帯が「苦しい」と答える現代の家計。この結果は、マクロな数字上の所得増加だけでなく、個々の家庭が実質的に暮らしの豊かさを実感できるかという、家計の実態を考える上で重要な視点となっています。政策や社会の関心を単に「所得を増やす」ことだけに置くのではなく、物価変動や世帯実態に即した「暮らしを豊かにする」実質的な生活基盤の安定へどのように繋げていくか、より深い議論が必要とされています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)