7月に入り、各企業は節電に向けた取り組みを本格化しているが、飲料業界においては自販機が電力を多く消費する機器の筆頭に挙げられたことから、悪い面ばかりが注力されていた。しかし実際は、今回の節電以前より、様々な消費電力の低減対策を実行し、省エネ対策を積極的に行っていたようだ。
日本自動販売機工業会によると、加盟企業は1995年より夏場の7から9月の3ヶ月間は、缶・PET飲料自販機は冷却運転を停止してきた。これを電力需要の少ない午前中から13時までに商品を一気に冷やしこみ、13時から16時の3時間は冷却機の運転を停止するというピークカット機能という。この間は照明も消しており、この3時間に使用する電力は1台あたり17W前後であった。今回は、そのピークカット機能を9時から20時まで時間帯に延長し、危機的な節電に対応している。
また伊藤園、ダイドードリンコ、キリンビバレッジ、日本コカコーラーなど飲料業界各社は、自販機の種類にも工夫を凝らし、開発を行ってきた。例えば、エアコンや給湯器で利用されているヒートポンプ機能を搭載した「ヒートポンプ式自販機」。自販機には商品を冷却する庫内と加温する庫内があり、商品を冷却することで熱が発生する。従来、この熱は自販機の外に排出していたが、これを商品加温する庫内に送り、加温熱として再利用する方式がこの自販機だ。また、近年では商品を冷却するための冷媒として、オゾン破壊係数がゼロで、地球温暖化係数が極めて低い自然冷媒を使用したノンフロン自販機も普及が進められている。
ダイドードリンコはその他、加温庫内と冷却庫内をしきる断熱効果が高い「真空断熱材」や、売れ行き状況に応じて加温・冷却を行う「学習省エネ」機能を採用。また蛍光灯よりも省エネ効果が高い長寿命のLED照明も採用するなど、さらなる省エネ化を図っている。このLED照明は蛍光灯の水銀など、環境負荷物質の削減にもつながるという。また日本コカコーラーでは、2008年に発表した「ecoる/E40(エコるイーフォーティー)」が、効率的な加温を可能にするヒートポンプシステムに、機密性や断熱性の高い真空断熱材を搭載、さらに大幅に消費電力を削減し、長期にわたり交換不要なLED照明を合わせた画期的なエコタイプの自販機として注力されている。これら3つの技術を組み合わせることで、同社従来機に比べ40%以上の省エネルギー化を実現。もちろんノンフロン冷媒を採用している。さらに「ecoる/E40(エコるイーフォーティー)」の機能に加え、自販機本体の上部に設置したソーラーパネル発電により、夜間照明の消費電力量ゼロを実現した「ecoる/ソーラー」は、次世代型自販機として注目を集めているという。
今回の震災により、消費電量を浪費したイメージでクローズアップされた自販機だが、実際は、早くより省エネ対策を講じていた節電における優等生だったのかもしれない。