長引く不況に追い打ちをかけた震災による影響で、各企業少なからず打撃を受けている。6月・7月と行われる株主総会でも厳しい報告が相次ぐものと考えられ、各企業、様々な方向性を見出し、この状況を打破すべく邁進している。株主に対しても、これまで以上に、様々な形で信頼に応える努力を行っているようだ。
企業と株主との最大の信頼関係は配当にある事には間違いはないが、その他にも一定数以上の自社株式を、権利確定日に保有する株主への優待制度、株主優待の存在が昨今は大きい。この制度には法的な義務はなく、米国などの企業では稀に実施されているが、基本的には日本独自のものであるという。
昨年発売された「知って得する株主優待」2010年版では、同誌掲載の株主優待実施企業1,019社を対象に、「驚き!感動」「家族みんなで楽しめる」「クチコミで広めたい」「家計大助かり」「もう手放せない!」という5つのテーマに分けて1社以上3社まで選択してもらう方式でアンケートを実施。各項目のランキング及びすべてを合算した結果が総合ランキングとして掲載されている。
テーマ別に見ると「家計大助かり」部門では1位が伊藤ハム、2位がイオン、3位が日本マクドナルドホールディングスとなっている。1位の伊藤ハムは5000円相当の自社製品を1000株以上保有する株主に送るという。「家族みんなで楽しめる」部門では1位は日本マクドナルドホールディングス、2位はダイドードリンコ、3位はオリエンタルランドとなっており、1位の日本マクドナルドホールディングスは1冊中に「バーガー類・お飲み物・サイドメニュー」という3種類の商品の無料引換券が1枚となったシート6枚の食事優待券を貰う事ができ、株保有数によって冊数が変わるという。また「驚き!感動」部門では1位がダイドードリンコ、2位が日本マクドナルドホールディングス、3位がカゴメとなっている。1位のダイドードリンコは3,000円相当の自社製品を年に2回、進呈している。
総合でみると1位が日本マクドナルドホールディングス、2位がダイドードリンコ、3位がカゴメ、4位が伊藤ハムとなっており、食品・飲料業界が上位を占めている。今回の震災直後の3月中旬に、優待商品を送ったダイドードリンコは株主から「飲料がない時期だったので助かった」という言葉をもらったという。「発送時期が偶然重なったのですが、少しでもお役に立てて良かった」と同社の担当者は語る。
景気回復を含め先行きが不安定な国内経済において、各企業の配当金の急激な上昇などは見込まれない。しかし、こうした優待商品によって、小さな幸せを感じてもらうことも、企業と株主との長い付き合いの要因になると考えられる。