地方銀行主要6行(横浜銀行 <8332> 、千葉銀行 <8331> 、静岡銀行 <8355> 、常陽銀行 <8333> 、福岡銀行が属するふくおかFG <8354> 、京都銀行 <8369> )の2012年度中間決算は、収益性については各行まちまちだった。
横浜銀行の経常収益は前年同期比0.9%増だが、経常利益は3.0%減、純利益は0.9%減。通期業績見通しは経常利益を20億円、純利益を10億円上方修正している。千葉銀行の経常収益は前年同期比6.2%減、経常利益は2.0%減、純利益は6.1%減。通期業績見通しは経常利益も純利益も前期の3.0%増で修正なし。静岡銀行の経常収益は前年同期比8.0%減、経常利益は12.4%減、純利益は57.4%増。通期業績見通しは経常利益0.2%増、純利益49.2%増で変わらない。常陽銀行の経常収益は前年同期比0.4%減だが、経常利益は15.8%増、純利益は29.6%増。通期業績見通しでは純利益を10億円上方修正している。ふくおかFGの経常収益は前年同期比0.2%増、経常利益は5.6%増、純利益は40.8%増。通期業績見通しは前期比で経常利益39.2%増、純利益0.6%減で修正なし。京都銀行の経常収益は前年同期比2.7%減、経常利益は16.4%減、純利益は19.7%減。通期業績見通しは経常利益を5億円上方修正している。
銀行の財務の健全性を示すのは「自己資本比率」と「不良債権比率」。国際統一基準の連結自己資本比率は3月末と比べて、横浜銀行は13.67%から14.37%に増加、千葉銀行は14.35%から14.40%に増加、静岡銀行は17.49%から17.84%に増加、常陽銀行は12.78%から13.16%に増加、ふくおかFGは10.98%から11.34%に増加した。京都銀行だけは14.26%から13.77%(新基準では13.86%)に減少している。地銀上位だけに全行2ケタでどこも健全だが、不良債権比率のほうはどうだろうか。
3月末と比較した金融再生法開示基準の不良債権残高の増減と、不良債権残高が総与信額に占める比率(増減)は、横浜銀行が83億円増加して2.2%(増減なし)、千葉銀行が111億円増加して2.16%(+0.08%)、静岡銀行が68億円減少して3.25%(-0.14%)、常陽銀行が31億円増加して3.22%(+0.04%)、ふくおかFGが27億円増加して2.98%(-0.03%)、京都銀行が29億円増加して3.57%(+0.06%)となっている。増えていても全体からすれば微増で、全て2~3%台の健全な範囲にとどまっている。
横浜銀行は決算と同時に自社株買いの発表も行って株主を喜ばせたが、今期が終わって新年度に入ると一転、地銀各行の不良債権比率が悪化して自己資本比率が減っていく可能性がある。亀井静香元金融担当大臣の肝いりで制定された「亀井法」こと「中小企業金融円滑化法(モラトリアム法)」が、来年3月末に期限を迎えるからである。
借入金返済を猶予して中堅・中小企業の資金繰りを助けたこの法律がなければ、中堅・中小企業の倒産が一気に増えるのではないかと危惧されている。主な貸出先が中堅・中小企業の地銀は、円滑化法期限切れ後を意識したさまざまな「出口戦略」をとっている。
財務上の準備は「貸倒引当金の積み増し」だが、中間決算にはまだ現れていない。本決算か、来期の第1四半期からだろう。
ただ、金融庁は「事業再生ファンド(地銀再生ファンド)」の設立を促しており、北洋銀行、香川銀行、徳島銀行、八十二銀行は投資ファンド、広島銀行は日本政策投資銀行と組んで再生ファンドを設立し、それに県内の金融機関が加わっている。横浜銀行は昨年12月に神奈川県内の地銀、信金、信用保証協会、中小企業基盤整備機構と組んで「かながわ中小企業再生ファンド」を設立したが、千葉県でも、県が出資先に加わり千葉銀行を中心に同じ方式で中小企業の再生ファンドを立ち上げる。円滑化法の期限切れをにらんで下期、全国各地でそんな動きが活発化しそうで、地銀は出資でも運用でも、その中心的な役割を果たすだろう。