節電対策の提案を消費者に向け行う企業達

2011年05月23日 11:00

 間もなく到来する暑い季節に向け、節電対策に各企業が動き出した。

 環境保全に関する取り組みが各業界のトップランナーであると環境省から認定を受けた『エコ・ファースト企業』。18日に環境省で行われた「エコ・ファースト 2011年夏の節電の約束の会」には24社が出席し、各社がそれぞれの2011年夏期の節電対策を松本環境相に対し、発表した。製造部門を持つ企業では、関東・東北の節電対象管内を中心に工場の消費電力を最大限抑え、オフィスでは空調の温度(28℃)徹底や照明・OA機器・エレベーターなどの使用制限、そしてクールビズを実施し、社員の節電への取組みを推進していくといった内容を多くの企業が宣言した。そんな中、消費者に直接節電を即す啓発活動に積極的に取り組む企業も見られた。

 サービス業においては直接、消費者とのビジネスの機会が多い事もあり、推進活動のやりやすさもあるが、他の業種においては提案する場や時間も限られており、アイデアや工夫が必要だ。資生堂は「自社商品を活用し、節電しながら美しさ、快適さを保てる工夫」を積極的にユーザーに提案すると発表しており、オフィシャルサイト内でも既に『被災地での肌と髪のケア』という緊急特集を立ち上げ、積極的に取組む姿勢を見せている。日本航空は夏休み期間の特別運賃の拡大設定やキャンペーンを通じて旅行需要の喚起と節電・経済の復興に貢献するとし、機内誌を利用した節電協力の呼びかけなども行う。

 そして、住宅関連メーカーも様々な工夫を凝らした提案を消費者に向け行う。「イナックス」ブランド(リクシル)は省エネ型製品の提言・喚起を行うとしており、オフィスや住宅での設備機器に省エネの期待がかかる。また、ノーリツはショールームに「節電・省エネ相談窓口」を設置し、消費者の節電・省エネへの支援をする。加えて、省エネ型製品及び太陽光・太陽熱関連の新エネルギー製品への営業活動を推進するなどこちらも積極的な姿勢を打ち出している。

 これらのオフィス・住宅設備メーカーとも関わりの深い住宅メーカーの中でも、いち早くエコ・ファースト企業に認定された積水ハウスはさらに積極的な展開で消費者への節電意識を喚起させる考えだ。ショールームや展示場において、そこで使用される家電製品や設備の電力量の計測を行い、実際の生活シーンで掃除や調理に消費される電力をどう使い分ければいいのかを消費者に疑似体験させたり、簾・よしず、ゴーヤなどでつくるグリーンカーテンの利用や、打ち水などをエアコンと組み合わせて効果的な過ごしやすい居住環境づくりを提案するなど、省電力生活の実演の場としてそれを上手く利用することを発表した。これには家電や住宅設備のショールームとは違い、家を一軒まるごと利用する事でトータルに提案できるというメリットがあり、住宅を通じた暮らしの研究を継続的に行ってきた強みがそこにはある。そして同社はこれらをまとめたハンドブックを作成し、多くのユーザーにピーク電力15%カットを実践するための啓発を積極的に行っていく考えとしている。

 11日に発表された気象庁の予想によると、今年の夏は平常の状態が続く可能性が高いとしており、昨夏の様な猛暑はないかもしれない。だが、製造業の工場やオフィスなど大口需要を持つ企業の空調設備などの節電対策に対しては国民の関心は引き続き高いのが現状だ。その一方では家庭内でも節電対策の重要度はますます高まっており、今回の積水ハウスの取組みのような具体的に「見える」形での提案をますます期待せずにはいられない。