今週の振り返り 日経平均は3勝2敗でも1週間で277円上昇

2013年03月16日 17:48

0205_025

PM2.5、シェールガス、メタンハイドレートにTPPと買われる材料のタネは尽きない

 来週の展望 日銀首脳陣が交代して株価は底堅く推移するか

 来週は20日(水曜日)が春分の日で祝日休場になり、取引は4日間。「節分天井、彼岸底」という言葉があるが、節分の翌日の2月4日から春の彼岸の入り直前の3月15日までに、日経平均は1300円、11.55%も上昇し、そんなジンクスはあっさりとひっくり返した。アベノミクス期待の強い相場は大きな調整局面もなく続いている。

 来週最大の経済ニュースになりそうなのが日銀の新体制発足で、「黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁」の同意人事案は14日の衆議院本会議に続いて15日の参議院本会議でも無事可決され、19日に退任する白川総裁、西村副総裁、山口副総裁に代わって20日に就任する運び。黒田新総裁はさっそく臨時に金融政策決定会合を開催する意向で、3月中、早ければ21日にも開催するのではないかという話まで出ている。日銀当座預金の付利の撤廃という緩和策も噂されているが、焦点はむしろQE3にならってリスク資産を買い入れる「量的緩和」になりそうで、日銀が何をどれぐらい買い取るか、いろいろ憶測を呼びそうだ。どちらにしても株価にはプラスになる。

 3月21日には国土交通省の1月1日時点の「公示地価」が発表される予定で、全国平均が5年ぶりに上昇に転じるかもしれないと市場では期待されている。すでに不動産関連や含み資産関連の銘柄は連日ランキングをにぎわせているが、21日に発表される数字次第ではさらに過熱しそうだ。もし全国平均が下落しても東京都心部周辺の地価の上昇がはっきり示されれば、東京都競馬 、よみうりランド 、東京テアトル や、倉庫、鉄道、百貨店といった含み資産銘柄が買われる材料としては十分だろう。

 来週の経済指標は、国内では19日に1月の景気動向指数改定値、2月の百貨店売上高、21日に2月の貿易統計、1月の全産業活動指数、2月の全国スーパー売上高、2月のコンビニ売上高が、それぞれ発表される。海外では18日にアメリカの3月のNAHB住宅市場指数、ユーロ圏の1月の貿易収支、19日にアメリカの2月の住宅着工件数、建設許可件数、イギリスの2月の消費者物価指数、ユーロ圏の1月の建設支出、3月のZEW景況感調査、20日にアメリカの政策金利、ユーロ圏の1月の経常収支、3月の消費者信頼感指数、21日にアメリカの1月の住宅価格指数、2月の中古住宅販売戸数、3月のフィラデルフィア連銀製造業指数、2月の景気先行指標総合指数、ユーロ圏の3月の製造業/サービス部門の購買担当者景気指数(PMI)速報値、中国の3月のHSBC製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値が、それぞれ発表される。

 アメリカのNYダウは10日続伸、8日連続史上最高値更新(14日時点)という〃宇宙旅行〃に沸いているが、未体験ゾーンを進めば進むほど、QE3の量的緩和策の出口という〃ブラックホール〃が忍び寄ってくる。来週は19日から20日にかけてFOMC(連邦公開市場委員会)が開催される。日本時間で21日午前3時に声明が発表され、30分後にFRBのバーナンキ議長が記者会見を行う予定。過熱感に満ちているだけに発言の言葉尻をとらえ相場がセンシティブに動くかもしれない。もし議長が「失業率6.5%は(QE3終了の)絶対条件とまでは言えない」などと口にしたら、直後にNYダウ100ドル下落もありうる。それでも来週、指標が続々発表されるアメリカの住宅市場の好調さが続く限り、景気が下振れする心配はない。

 むしろ気になるのが中国の景気動向で、市場関係者が「春節(旧正月)を境に製造業の生産が上向き景気回復が軌道に乗る」と想定していたシナリオがここにきて狂ってきた。発表された経済指標を見る限り、輸出が伸びても工業生産や小売売上高が市場予測を下回るなど、まだら模様で力強さに欠けている。個人消費がらみの指標の中には日本のほうが回復が早いと感じさせるものもある。
 
 17日で全国人民代表大会(全人代)が終了し、「政治の季節」が終わってこれから経済が本格的にリスタートするという見方もあるが、残念なのはインフレを懸念して金融当局に金融引き締めにシフトする動きがある上に、金融緩和時にマネーサプライが拡大したのにそれが実体経済に向かわずに都市部の不動産投機に回っている状況が見られることである。それはかつての日本のバブル経済形成過程の「カネ余り現象」とうり二つだ。「バブルは、ふくらんではじける前につぶせ」と中央も地方政府も不動産取引規制を次々と打ち出しており、その影響で今週は上海総合指数が5日続落するなど、中国の株式市場は春節明けからずっと軟調続き。この調子では、中国の製造業の生産回復、景気の上向きを経済指標ではっきり確認できるまでは、コマツ 、日立建機 、ファナック や自動車では日産 あるいは商社株など、中国関連銘柄の低調は当分の間、続くことになりそうだ。来週も東京市場の足を引っ張る存在になるだろう。

 その中国の隣にある半島では日韓合同軍事演習が21日まで行われる。それを核保有国の北朝鮮が軍事境界線の向こうから過激発言で野次り、気が滅入りそうになる日々はまだ続きそうだ。今週は東証がそれによる地政学的リスクを東京市場の下落要因に挙げていたが、これは、何かの間違いで若き指導者が変な気を起こさないように祈るしかない。

 来週の株式市場は、下落要因だった「決算対策売り」が峠を越し、26日の3月期決算企業の権利付き最終日に向けて、配当取り、株主優待の権利取りで買われる動きが出てくるだろう。そんな要素も加味すると、FRB発、ヨーロッパ発、朝鮮半島発のビッグサプライズが起きなければ日経平均が大きく下落する可能性は小さく、底堅さを反映してレンジは12300円~12700円とみる。(編集担当:寺尾淳)