「普段通りに過ごす」ことが復興支援へつながる

2011年04月25日 11:00

 東北地方太平洋沖地震により各地で様々な被害が発生している。この被害は多岐に渡っており、直接的、間接的と状況は様々だが、一時は被災地以外の地域でも自粛の動きが活発化し、コンサートやイベントなどの中止、または不謹慎ということで、旅行のキャンセルも相次ぎ、外食を控える人が増え、国内全体が沈んだ空気に包まれた。

 もちろん、被災者のことを考えると、浮かれている場合ではない、と思うのは当たり前のことだろう。しかし、日本は今回の未曾有の大震災から復興しなければならない。 “被災者の気持ちになりなるべく自粛する”という状態が継続すると、消費が止まり、経営が困難を極める企業が増えていくことは間違いない。国内経済を動かすという意味でも、西日本の人間は特に出かけたり、ショッピングしたり、外食するという「普段通りに過ごす」ことを心がける必要があるのではないだろうか。

 その中でも飲食業界というのは、地域に根付き顧客を掴むという意味でも、地域経済の活性化と密接なつながりがあると考えられる。通常なら3月、4月は歓送迎会やお花見などで予約も増え賑わうはずの時期だが、全国各地でキャンセルが相次ぎ、景気の低迷にさらに追い打ちをかける震災の影響が業界を襲う。しかし、人間の活力の元である食べる、飲むという本能が正常に働き、直接被害の無かった地域から飲食業界が少しずつでも活況を迎えることが、日本の経済を上向きに少しずつでも動かすことになるのだ。

 例えば、吉野家ホールディングスが運営する吉野家は、4月5日から11日にかけて静岡・長野・富山県以西の西日本地区にある552店舗で、「がんばろう、日本。牛丼110円引きセール」を実施した。これはこれから復興を支える西日本地区の人々に、「うまさ」で元気を届けたいという、復興に向けたエールの一環だという。

 また、大阪に本社を置き、「和食さと」などを展開するサトレストランシステムズは、「食を通じて社会に貢献する」という企業理念の元、基本的には普段通りの営業を心がけることを社員一同再認識しているという。震災直後はモバイル会員への10%オフクーポンなどを提供する週末のメール配信も休止していたが、4月より再開。また、関東地区41店舗は計画停電の影響もあり、閉店時間を早めるなどしたことも影響して3月は2割減の売上となったが、今後は関西・中部地区155店舗で関東地区店舗を引っ張るべく、コマーシャル展開も同地区のみで開始する。「当社が営業することで、食材をはじめとした”もの”が動き、関連各社の動きを止めることも防げます。そういう積み重ねが日本の経済を動かすと確信しております。私たちが本来の営業を続けることが、日本の復興につながると信じています」と担当者。今後も関東地区では、余震や計画停電など不安定な状態が続くと想定されるが、関西・中部地区から元気を発信することを新たに決意しているという。

 被災地で日々、復興に向け頑張っている人々のことは常に忘れてはいけないのは確かだ。しかし、西日本においては可能な限り普通の生活を続けることも、今後は復興支援、そして景気回復につながると信じ、願いたい。