シダックスの積極的な正社員登用は何を意味するのか

2013年03月22日 12:15

 早期退職制度を実施する大企業が目立つ中、総務省「労働力調査」平成25年1月分によると、就業者数は前年同月比17万人増と3カ月ぶりにプラスとなり、就業率は56.2%と同0.3ポイントの上昇、完全失業率(季節調節値)も4.2%と前月比0.1%減となるなど、極々緩やかではあるが、回復傾向がみられる雇用情勢。アベノミクスへの期待や同調から賃金アップを実施する企業もみられ、景気回復への期待、特に実体経済の回復への期待が徐々に高まっている様子である。

 こうした中、「社会問題解決型企業」をビジョンとするシダックス<4837> が、2013年4月1日から202名の正社員登用を実施、さらに継続的に正社員雇用を続け、2015年までに1000名規模の正社員登用を行うと発表。現従業員数の約1割にあたる大型の新規雇用・正社員登用となる。

 社員食堂等の受託運営やレストランカラオケ事業のイメージが強いシダックスであるが、車両運行サービス事業、図書館・道の駅等の施設運営を行う社会サービス事業に加え、2013年からはスポーツ&カルチャー事業を展開、栄養士、調理師、保育士、学芸員等4500人以上の資格保有者を有している。その各事業において2008年から2012年まで継続的に計907名の正社員登用を実施。2013年度から、さらにその枠を広げることとなる。今回、正社員として登用したのはグループ各社の「栄養士」「運転サービス士」「司書」「支配人」等のスタッフで、有期雇用契約社員として雇用している1万名強の中から、登用試験を経て選抜したとのこと。

 有資格者や経験者が多く占めるであろうとはいえ、3年間で1000人規模の正社員登用と聞けば、雇用に対する積極姿勢がうかがい知れる。2008年から2012年まで継続的に計907名の正社員登用を実施というのも、聞こえはいい。しかし、同社が公表している「アニュアルレビュー」によると、2010年3月31日現在の従業員数は11535人と2009年同時期の従業員数11492人よりは微増しているものの、2011年は10606人、2012年は10051人と、毎年数百人規模で減少している。これだけ離職者が多いことを考えれば、3年で1000人規模の正社員登用といえども、積極雇用というよりは、抜けた人員の補てんという意味合いの方が強いであろう。そして何より、労働環境への疑問を感じずにはいられない。(編集担当:井畑学)