全国で年間に発生する損失は約38.1億人時間、貨幣価値換算すると約12兆円にも上るとされる交通渋滞。この交通渋滞は、経済効率の低下等を引き起こすだけでなく、環境への負荷も大きな問題となっている。長年に渡りその解消が図られてきたが、実際に取られる策としては、ひたすら道路を造り、多車線化を進めるといったものが中心となっている。
こうした中、ホンダ<7267>が、インドネシアで実施した渋滞抑制技術に関する公道実験の結果を発表。道路を造るのではなく渋滞抑制技術を用いることで、渋滞発生を遅らせる効果だけでなく、燃費を20%以上向上させる効果を確認したという。
ホンダは、渋滞は交通流が乱れることにより発生することから、渋滞抑制のためには一台一台の車両が周囲の車両と同調した走行を心掛ける必要があることに着目。ドライバーが周囲の車両と同調した走行をしているかを、スマートフォンのディスプレイの色を変化させることにより一目で確認できるアプリを開発した。このアプリで車両の加減速変動のパターンをモニターし、渋滞の発生につながる走行であるかを判断することにより、周囲の車両と同調した走行をサポート。結果、交通流が滑らかとなり車両の平均速度が向上、渋滞の発生を遅らせることが出来たという。また、速度変化が緩やかになったことで安全性が向上するとともに、燃費も20%以上向上したという。
若者の車離れが叫ばれて久しく、少子高齢化の勢いも衰えていない。早晩、絶対的な交通量が減少することは明らかであろう。こうした中、何十年も前に策定された計画を基に粛々と道路建設を進めることにどれ程の意味があるであろうか。今後もホンダは、実際の交通流量や走行パターンをもとに、二輪車などへの応用を目指して音や振動で周囲と同調した走行をサポートする機能の開発などを進めるという。今あるものを最大限有効に活用し、こうした技術開発を支援することの方が、よっぽど建設的なのではないだろうか。(編集担当:井畑学)