日立製作所<6501>は6日、使用済みの製品からレアアース(稀土類)を抽出するリサイクル技術を開発したと発表した。
このたび開発されたのは、ハードディスクドライブ(HDD)のモーターやエアコンのコンプレッサーなどからレアアース磁石(レアアースを含む磁石)を分離・回収し、乾式手法によってレアアースを抽出する方法だ。この方法では、HDDのモーターからレアアース磁石を分離・回収する過程においては、手作業で行った場合の約8倍(1時間に約100台)という高効率で行える。レアアース磁石からレアアースを抽出する過程では、これまでは化学薬品を使用していたために廃液処理が必要であり、コストや環境保全の面で問題があったが、レアアースと親和性の高い抽出媒体による乾式手法を実現したことでそれらの問題をクリアした。同社は今後、リサイクル全体のコストや回収率の試算を行い、2013年をめどに本格的な稼動を目指す。
同じくレアアースの安定調達に関しては、先月24日に双日 ?2768? が、オーストラリアのライナス・コーポレーション・リミテッド社と日本向け供給、およびライナス社レアアース拡張プロジェクトに関して、戦略的提携の締結に基本合意したと発表している。具体的な内容は、ライナス社が手掛けるレアアース開発プロジェクト(西オーストラリア州マウント・ウェルドにおける鉱山開発と、マレーシアでの分離精錬)について、2011年第3四半期より操業を開始するというもの。今回の基本合意によって、今後は日本における販売代理店を双日が務め、同鉱山操業後の10年間に年間約9,000トン以上という長期的な供給契約の締結に向けた交渉を行いつつ、日本のレアアースの需要家の開拓を目的とした共同マーケティングを実施する。
電子機器やエコカーの製造に欠かせず、今後一層の需要が見込まれるレアアースだが、世界生産量の90%以上を中国が占めている。その中国が9月の尖閣諸島沖の漁船衝突事件を機に対日輸出を事実上滞らせたことで、日本としては安定供給のために中国以外の調達先を探すことが急務となっていた。中国からの対日輸出に関しては、一部では通関手続きが進むなど改善の兆しも見えるが、現在と同じ状況を続けていれば、将来このような事態が再度起こった際にも同様の危機に直面することは明らかだ。そういった危機を回避するためには、安定して調達できる先を見つけることはもちろんだが、日本企業の高い技術力を活かした独自方法を見出すことも、中国頼みの状況から脱却するためには必要となるだろう。