賃貸住宅に住む人にとって、両隣や上下階の部屋から漏れ聞こえてくる生活音は大きな問題の一つ。少しの時間であれば気にならない程度の音も、毎日聞くことになると大きなストレスになり、精神的な苦痛を感じることもある。しかし、家族構成や生活スタイルが異なる複数の世帯が同じ建物内に居住する賃貸住宅では、騒音問題はつきものだ。最近では近所付き合いも希薄になることが多く、同じフロアにどんな人が住んでいるか全く知らない、という居住者も多い。そんな状況であれば苦情を伝えることもままならず、トラブルに発展するケースも少なくない。
実際、賃貸住宅を建築する積水ハウス<1928>が8月に実施したアンケートによると、一般的な賃貸住宅の居住者の現在の住まいに対する不満として最も多く上がったのが「上階や隣からの騒音」で約30%。さらに、気になる騒音の種類(複数回答)としては、「大人の足音」が約43%で、「子どもが走り回る音」が約20%であった。
そんな中で同社は、自社が提案する鉄骨造の低層賃貸住宅において、一般的な鉄骨造の低層賃貸住宅に比べて上階からの床衝撃音を約2分の1に軽減する独自の高遮音床システム「シャイド55」を開発。賃貸住宅の建築を検討しているオーナー向けに9月から提案を開始している。
「シャイド55」は、賃貸住宅商品の2階床下部に、高い剛性の押し出し成型セメント板を基材とした「シェルシャッドスラブ」を採用。さらに床上の振動を吸収し、下階に伝えにくくする「防振天井吊り金具」や「床衝撃音用ダイナミックダンパー」といったオリジナルの特許技術を組み合わせ、上階から下階に伝わる音を軽減している。同システムを床に組み込むと、一般的な鉄骨造の賃貸住宅の床遮音性能が「L‐65」であるのに対し、10dBダウンの「L‐55」(鉄筋コンクリート造のマンション並みに相当)を確保できる。これにより、上階からの衝撃音の聞こえ方は約2分の1になるという。
先述のアンケートで、賃貸住宅の住み替えに際し「高遮音床を採用した賃貸住宅に住んでみたい」と答えた人は約75%に上る。同社は、この「シャイド55」を低層賃貸住宅に積極的に導入し、周辺物件との差別化を図ることで受注の拡大を狙う。
(編集担当:上地智)